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 池波正太郎インタビュー
私は若いときには仕方なく付き合いで酒を飲んだことがあった。また時には仲間と深酒に及び、羽目を外す飲み方をしたこともあった。
だが、今は違う。年齢を刻むにつれ飲み方のスタンスが全く異なってきたのだ。

昨今の私の飲み方は気のあった者同志、年齢や仕事に一切関係なく好きなものについてとことん語り合い、有意義な盃を交わしたいと感じている。昨日仕事を終えた私が向ったのは仙台駅東口のこのビルである。

彼が私のブログに登場するのはこれで二回目となる。この日盃を交わしたのはこのビルの2階に位置するサイゼリアである。彼は土佐武将の末裔であり、特に戦国時代や幕末について詳しい。但し彼は上方の出身ゆえ、薩長側の立場に立った歴史観を持っている。

このあたり、東北生まれの私とは異なるものがあるがそこは大人同士の付き合い。彼は殊勝な物言いの中に、相手の話を正面から否定せず、これを受け止めて流すというクールな姿勢を持ちあわせた人物である。

こうして薩長支持派の彼と奥羽越列藩支持派の私は、気心の知れた同士としてとりとめもない歴史談話に及んだ。もちろん、新撰組や吉田松陰の啓蒙思想、坂本竜馬、高杉晋作らの並外れた行動力も話題となった。

彼は池波正太郎のファンであり、グルメでもある。これは最近彼から借りた本である。剣客商売や鬼平犯科帳には多くの料理が登場し、テレビでも「池波正太郎の江戸料理帳」と題した人気番組が存在する。

池波は生前、よく下町を中心に食べ歩き、作品へのヒントにしていたとされる。それは単に料理の内容に留まらず、店の雰囲気であったり、時として料理人や従業員の表情や行動であった。彼の後期心旺盛な姿勢を知るにつけ、私は『歴史作家とは先ずは人の心を読むことから始まる』と感じている。然るに、この本は彼の執筆スタンスの真骨頂が垣間見え、池波ファンならずとも一見の価値のある本と踏んでいる。

池波正太郎はやや山本周五郎の生い立ちとも似ているが彼ほどハングリーではない。
私はそれがその後のこうしたグルメ志向に繋がったのでないかと考えている。

彼の作品に接すると、世の中の裏の裏までを見通す力を感じるが、この本の中で彼が出入りの店で馴染みの料理人に語った言葉が印象に残っている。

それは「僕もそうだが人間はいつでも学ぼうとする心が大切、だから天狗になったらお仕舞いだよ」という言葉である。この時彼は既に歴史小説の大家となっていたが、極めて謙虚な言葉である。

風はさほどなかったが、放射冷却のせいか底冷えのする一日だった。歴史談義にふけるうちに夜は深々と更けていった。心地よい余韻を心に残しつつも、彼とは再会を約束し別れた。
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