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 Scotland The Brave 
 エッセイ「名誉を損じない生き方を貫く」

あれは今から9年前に遡る。私の心の弱さに心の病が巣を作ろうとしていた。往時の私は己を客観視するということがまったく出来ていなかった。次第に私は大きな渦の中に巻き込まれていった。気づいた時には脱出するのはもはや不可能であった。もがけばもがくほど身動きが出来なくなった。あの時の私は蟻地獄の巣に落ちた一匹の蟻に過ぎなかったのだ。

仕事の遂行能力、他人からの信頼、取り巻きの面々の心変わり…、今思えば失ったものは非常に大きかった。一度失われたものへの復旧には膨大なインターバルを要するものであり、そのギャップを埋めるには多くの実績を地道に積み重ねてゆくしかないのである。

こうして私はみるみる人生の敗者になっていった。再浮上など及びも着かないほど、心の受けたダメージは大きかったのだ。出口の見えない真っ暗なトンネルの中は心細かった。せめて蝋燭の灯火でいいから足元を照らしたかった。絶望的な状況にあったが、家族のため、己のため、投げやりにならず、毎日少しずつ手探りで前に進むしか術がなかった。回復への糸口は自分で掴むしかないが当時はそれすら頭に浮かばなかった。

しかしながら今になってこれを客観するならば、ようやく「他力本願」という言葉に別れを告げる好機が到来したと捉えることも出来よう。

一時も止むことのない不調の嵐、この時悩む自分に悪魔の囁きがあった。『お前さんの魂を俺にくれないか?さすれば楽になる。』と。一度負け組みとなればその流れを変えるのは至難の業であり、このような誘惑は日々限りなく繰り返されるのである。今になって思えば、その度、何度「わかりました」と告げようと思ったのか計り知れない。

しかし守勢一方に転じながらも、私は魂をけして悪魔に譲らなかった。早朝の神社参りと数キロのウォーキングを毎日続けた。こうして病魔と格闘に及んで二年半、遂に悪魔のほうが根負けした。奴が少しずつ遠のいていったのに気づいた時、いつの間にか真っ暗だったトンネルのあちこちにはたいまつの灯火が灯され、どこに出口があるのかを私に教えてくれたのである。

「スコットランドブレーブ」という曲はスコットランド民族の名誉と誇りを感じさせる曲である。また、人生に於いて名誉を捨てないことが如何に大切なことかを顕著に教える曲でもある。俗人である某が今こうして平穏な気持ちでこの曲が聴けるのも、あの時悪魔に魂を売らなかったことへの褒美と捉えている。

ブレーブ(勇敢)という行為の遂行はやがて己のPride(プライド、誇り)に繋がり、哲学となって悟りをもたらし、やがては自信という名の財産となってゆくことだろう。
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