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昭和35年志賀直哉NHK出演時インタビュー他
「知るは楽しみなり」という言葉がある。一人の作家に畏敬の念を抱くことが生前付き合いのあった他の人物への興味へと繋がるのはこの言葉の極意に迫るものである。今回紹介する人物の連鎖は哲学者、和辻哲郎である。

 これは志賀直哉が和辻哲郎に宛てたはがき(大正3年8月17日投函)である。この時の直哉は31歳、和辻は25歳であった。和辻は『ニイチェ研究』を著したばかり、まさに新進気鋭同士の付き合いであった。

私は最近和辻哲郎の伝記としてこのような本を読んだ。小牧治著『和辻哲郎』である。

      和辻 哲郎(1889~1960

『古寺巡礼』『風土』などの著作で知られる日本の哲学者、倫理学者その倫理学の体系は、和辻倫理学と呼ばれる。日本的な思想と西洋哲学の融合、あるいは止揚とでもいうべき境地を目指した稀有な哲学者と評価される。主著の『倫理学』は、近代日本における独創性を備えたもっとも体系的な哲学書のひとつであると言われている。
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冒頭で紹介したはがきでわかる通り、哲学者の和辻哲郎は生前、志賀直哉と懇意にしており、数々のエピソードが残されている。

       志賀 直哉(1883~1971)

白樺派を代表する小説家のひとり。代表作は『暗夜行路』、『和解』、『小僧の神様』、『城の崎にて』など。強靭な個性による簡素な文体は、散文表現における一到達点に達する。小説文体の理想のひとつと見なされ評価が高い。
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   以下和辻哲郎随筆『漱石の人物』より
 私が漱石と直接に接触したのは、漱石晩年の満三個年の間だけである。しかしそのおかげで私は今でも生きた漱石を身近に感じることができる。漱石はその遺した全著作よりも大きい人物であった。その人物にいくらかでも触れ得たことを私は今でも幸福に感じている。

 初めて早稲田南町の漱石山房を訪れたのは、大正二年の十一月ごろ、天気のよい木曜日の午後であったと思う。…中略…食事をしながら、漱石は志賀直哉君のうわさをした。確かそのころ、漱石は志賀君に『朝日新聞』へ続きものを書くことを頼んだのであったが、志賀君は、気が進まなかったのだったか、あるいは取りかかってみて思うように行かなかったのだったか、とにかくそれを断るために漱石を訪ねた。

 それが二、三日前の出来事であった。その時のことを漱石は話したのである。その話のなかに、「志賀君もなかなか神経質だね」という言葉のあったことを、私はぼんやり覚えている。
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 これはどういうことなのだろう。直哉の愛弟子である阿川弘之氏によると若年のころの彼は型にはめられるのを極度に嫌ったため、字数制限や締切日の決められた新聞社の連載ものを嫌ったというのが真相らしい。
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 漱石は直哉のことをこうも語っている。芥川が漱石に「志賀さんの文章というのは、どうしたらあのように書けるものなのしょう」と相談しに行ったところ、漱石が苦笑して「ああいう文章は私にだって書けないよ。志賀は考えてああいうものを書いてるんじゃない。なにも考えずに書くからああいうものになるんだ」と言ったという。漱石の評したように形式にとらわれず、型にはまらないスタンス、所謂「散文」こそが直哉の真骨頂と言えるものであった。

 次に和辻哲郎と志賀直哉の関わりを如実に示すエピソードを紹介する。それは一時作家を志願した和辻哲郎が直哉と一緒に旅行し、その時のことをはっきりと記憶し、後日細かく描写する直哉の才能に驚いて、「俺にはとてもこんな才能はない」と察して諦めたというものである。逆に直哉は昭和35年のNHKのテレビ出演において、「自分は秩序だって物事を考えるのは得手でない」と言っている。

 このあたりはお互いの得意不得意、人間はけして万能でないということになるのでないだろうか。次回は和辻哲郎の著物『古寺巡礼』について紹介する。
        
          ※和辻哲郎に関わる主な著作

本ブログ、志賀直哉の研究シリーズ
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志賀直哉の真の魅力【動画】http://blogs.yahoo.co.jp/bgytw146/31767062.html
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志賀直哉生誕130周年を偲ぶ旅http://blogs.yahoo.co.jp/bgytw146/31505557.html
志賀直哉生涯23回の引越しの謎http://blogs.yahoo.co.jp/bgytw146/31434256.html
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志賀直哉「濠端の住まい」http://blogs.yahoo.co.jp/bgytw146/31743321.html
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