fc2ブログ
 不朽の名作「樅ノ木は残った」の全容に迫る
最近歴史ものに傾注する傾向の強い本ブログであるが、私は昨年の末頃から山本周五郎原作の「樅ノ木は残った」に関心を持ち、ずっと追いかけてきた。これは伊達騒動と言われる仙台藩の内紛(幕府を巻き込んだ一大事件)に関するものである。1970年NHK大河ドラマで放送されたこの作品はビデオが普及する前ということもあり、わずかに総集編版(上下二巻)が残るのみである。私は出入りの図書館に保管されているのを幸いに今回、三回に渡る視聴に及んだ。

同時に明治の頃に描かれた「寛文事件」(作者不詳)上下巻と長編小説「樅ノ木は残った」も読書を終え、ようやく一区切りがついた。きょうから二回に分け、この作品についての見所(ハイライトシーン)を紹介したい次第である。

1970年放送の「樅ノ木は残った」、先ずは主な配役をご覧頂きたい。

※原田甲斐(主人公:己と原田の家の存続を犠牲にしてまでも仙台藩のために全てを尽くし幕府の凶刃に倒れる)
※宇乃(仙台藩士宮本の家に長女として生まれる。15歳にして父母を事件の首謀者である伊達兵部の陰謀で斬殺され、幼い弟とともに甲斐に匿われる)
※伊達安芸(仙台藩重臣:人望に優れ、甲斐とともに幕府の仙台藩取り潰しに対抗した仙台藩屈指の賢臣、幕府への訴えが認められ寛文11年(1671年)250名の家臣を率いて江戸へ出立する)
※酒井雅楽頭(幕府大老、将軍を凌ぐ権力を有し、縁戚関係となった仙台藩重臣伊達兵部を使い仙台藩の分割、乗っ取りを企てる)
伊達兵部(仙台藩重臣、伊達政宗の十男、権力者酒井雅楽頭の下で仙台藩乗っ取りを企てる。原田甲斐を味方と思い頼りにしていたが、雅楽頭との密約書を甲斐の策略によって盗まれてしまう。)
※おくみ(甲斐の江戸別邸(湯島)に住むそばめ、甲斐との間に女子をもうける)

これは当時一大センセーションを巻き起こしたと言われるオープニングである。今となっては笑い話であるが、強風にざわめく竹林を背景に能面が登場するこのシーンを見た当時の幼子はあまりの怖さに泣き出したとされるものである。

両親を殺された直後に失語症になった宇乃。これは船岡(宮城県南部)の甲斐の屋敷に咲く樅の木に触れ、甲斐に「樅の木は生まれたところを離れ、たった一人になっても強く生きている」と諭されるシーンである。

実は山本周五郎の原作では宇乃は失語症でない。しかし脚本家茂木草介の視聴率狙いのため、原作変更に至り、周五郎から抗議が寄せられ物議を醸す。

甲斐の江戸の屋敷(湯島)では毎月このような「朝粥の会」が開かれていた。甲斐はこの席に様々な仙台藩士を呼び、酒を酌み交わしながら歓談するのを常としていた。

左は烈士、伊東七十郎、右は熱血漢、里見十左衛門である。二人は顔を合わせれば言い合いをしていたが実は心の通じ合う仲であった。二人とも一連の不穏な動きには伊達兵部が影で糸を引いているのを感じ、これを家老である甲斐に訴え出るものの、彼はこれを全く関心がないかのようにのらりくらりとはぐらかすのであった。

甲斐はこの動きを伊達兵部一味に読まれるのを避けるために、あえて白々しい態度を装っていたのである。

これは甲斐が義理の兄(妻、律の実兄)である茂庭周防(もにわすおう)と山小屋で話し込むシーンである。

一般の読後感想で言われるように甲斐はけして孤独ではなかった。実はこの茂庭周防と伊達安芸と三人体制が固まっていたのだ。これを知られないために彼は孤独を装いカモフラージュしていたという表現が真実に近いものである。

しかし彼の心の拠り所の一人だった茂庭周防は病弱のため、寛文事件が起こる前に病没してしまうことになる。甲斐にとって頼りにするのは伊達安芸のみである。

これは甲斐の江戸の別宅である湯島(現上野の近く)甲斐の江戸の別宅を訪れた時の大老酒井雅楽頭が甲斐を味方に取り込もう盃をかわそうとするシーンである。

甲斐はこの時身分を偽り浪人の身であると雅楽頭に告げたが、この嘘は見え見えであった。雅楽頭は八十島なる人物が原田甲斐であるのを勿論見抜いていた。しかしあくまでも甲斐は偽名を使い「それがしは浪人八十島で御座います」と述べるのみであった。

この時、甲斐は時の最大権力者酒井雅楽頭から直につかわされた盃を受けようとしなかった。甲斐のこの振る舞いはもちろん一味に取りこまれることを避けた上での決断である。まさに甲斐の清らかな人柄と武士らしい覚悟に接する思いを彷彿させる名場面である。

「ここはそれがしの屋敷です。例えどなた様のお勧めでも盃はお受けできません。」と述べる八十島主計こと原田甲斐。

甲斐のこの言葉に直情を顕にする雅楽頭。大老と浪人、この場で無礼討ちにしても不思議でないシーンである。

しかしここで二人の間におくみが割って入った。「その盃、わたしがお受け致します」…

おくみの器量の良さと良妻ぶりに際し、さすがの雅楽頭もかろうじて我を取り戻すのであった。

「そちたちはいい夫婦だ」と述べ、おくみに盃をつかわす雅楽頭。(但し原作では盃を甲斐に投げつけるものとなっている)

次回その2ではストーリーの大きな山場である伊達藩分割の密約書などについてお伝えする。
関連記事

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)