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  エッセイ「寒中熱燗価千金」
※日時指定投稿
日本人のアルコール体質を考える時、概ね三つに大別されるのではないだろうか?一つ目は欧米人並みにアルコール分解酵素が多く、酒に強いとされるタイプ、二つ目は先天的に分解酵素をほとんどもたず酒が全く飲めないタイプ、三つ目は両者の中間型で先天的に分解酵素は多くはないが、飲酒によって徐々に酵素が増え酒が飲めるようになっていくタイプである。
 
実は私は典型的な三番目のタイプである。若い頃はコップ一杯に注がれたビールを飲み干すことも出来なかった私が数十年の試行錯誤を経て、ようやく人並みに飲めるようになったのである。この酒飲みを覚えたことが私の人生の後半を変えることになった。

ここに春宵一刻価千金なる言葉がある。私は日本酒も洋酒もビールも嗜むが冬の夜の熱燗は他の酒とは別格の存在と言ってよく、まさに価千金である。放射冷却により一段と冷え切った寒空の下で五体がすっかり冷え切った私に再び精気を蘇らせてくれるのが昨今の熱燗なのである。その感覚たるや雪山で血迷った時に発見した山小屋くらいのインパクトと言っても大袈裟でない。
 
酒はけして高価な酒ではないが結構吟味している。なんと言っても辛口(できれば日本酒度+10以上)であることが絶対条件である。これは私の好む酒の肴である蟹味噌や海老味噌、塩ウニなどの酒盗への合わせを考慮した上での必然的な選択である。酒を辛口にして芳醇さ、甘味を抑えることでこれらの酒盗が一層引き立ち、口の中での至福のハーモニーを演出してくれるのである。

五十を過ぎてから定着した私の酒飲み道楽は単調になりがちなサラリーマン生活に潤いをもたらしてくれる。気分的なものかも知れないが、ほろ酔い気分となってから一段と詩文などの創作意欲が大きく高揚するのである。酒の量が一合半近くになってくると頭の中の毛細血管が膨らんでくるような感覚にとらわれ、脳全体が冴え渡り、反応が良くなるような感覚となる。それと同時にそれまで私の人格を覆っていた殻のようなガードが徐々に取り払われていくのがわかる。更に酒が進み、酔が回ると脳がトリップをし始め、様々な発想が夜空に漂う星雲の如く湧いてくる。
 
この時湧き出した短文を書き留めながら、接続詞で繋ぎ合わせ、形容詞を付け、具体的な体験談や人様から聞いた話に比喩を加えて立体的なものにしていく。そして部分や全体を見極め、細かい訂正を何度も加えながら全体を見据えて仕上げていくのだ。これは彫刻や粘土で芸術を創り出していく行程と似ているのかも知れない。
 
こうして自分が丹精込めたエッセイや詩をブログに発表することで大勢の人様の目に触れ、感想や批評を頂く。これが大きな張り合いになって次の創作意欲へと繋がる。これは本当にありがたい事だと思っている。このように私にとって酒飲み道楽は創作活動とのセットでもある。二つまとめて一つの趣味と言ってよい。

最後にこの趣味に於ける夢を語りたい。それは今や百近くとなったエッセイを厳選して二、三十編程度に絞込み、エッセイ集にまとめ、製本することである。昨年末に書き上げた歴史小説「金色の九曜紋とともに」は既に製本し二十人近くのかたに配ったので今度は第二弾として是非エッセイ集をまとめたいと思っている。そしてこの本を見ながら晩酌をするのが昨今の私のささやかな夢である。
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コメント

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ミックさん こんばんは

熱燗を飲んでいる姿を見るのが好きなんです(笑)
自分は殆ど飲まないのですが、日本酒一升瓶と写真の
雰囲気がたまらなく好きです・・・
塩粒うに(実家の方では”かぜ”と言います)も大好物☆
辛口の”じょっぱり”は出張中に飲まれたと思います。
ここで”ハーモニー”が出てきたのも嬉しいです♪

是非夢を叶えて、さらなるハーモニーを楽しんでください。

URL | 和奴 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ミックさん、おはようございます。

私も三番目の方です、病気前はお酒は2合以上は飲めませんが、ビールでしたら、何とか人様と御付き合いできる様になりましたが、病気後の今は一滴も飲めません。

健康が一番ですね。お酒は程ほどに・・・。

ナイス!です。

URL | 好日写真 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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クリオネさん、一般的に酔いが醒めてから自分の作品(成果物)を見るとより客観的に見ることができます。
私の場合もまったくその通りですが創作時は主観が主となってペンを走らせるのです。
だからと言ってそれでいいかどうかという見直の作業はは客観に頼るわけで、要は主観と客観を上手く切り変えなければならないということですがその辺が難しいところであります。
それでも明らかに飲んだ時は思考の回転が滑らかになるのを感じます。
コメント、ナイスを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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boubouさん、酒は煩悩との戦いでもあります。酒で人生を台無しにするかたもおりますので、この辺は趣味と言えども肝心なことであると考えています。
以前紹介した白楽天のような酒の飲み方(けして酒に飲まれずに上手く付き合い人生の友にする生き方)が私の理想です。
従ってその量と頻度は常に客観視するように心がけています。
二つの趣味がブログのお陰で一つになり、更なる相乗効果を生んだのは非常に喜ばしいことです。コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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joeyrockさん、昨日は週末の晩酌になりましたが、休みの前の酒はやはり最高です(笑)
量に関しては最近リミッターが無意識のうちに働くようになってきた気がしています。
それには昨年紹介した白楽天の影響(酒に飲まれずに友として上手く付き合う)が極めて大きいと分析しております。
いつかは彼のように卯時(朝方)の酒をと思っていますが、それは定年までのお預けとしたいと考えています(笑)コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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行雲流水さん、坂口安吾、太宰治…、アルコールの力を借りて作品を残した作家は多いですがこれが身の破滅に繋がったのも事実であり、侮れないところであります。
様々な先人の生き様を見て自らの襟を正す。私はこれが先人の遺志に添うことに繋がるとも思っています。
酒は量を守ってこそ、百薬であり利をもたらす。これを改めて念じて参りたい所存です。コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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はぐれ雲さん、創作をしていると自分の身を非日常の世界に置きたいと思うことは多々ありますが、私の場合は飲酒がこれに当たります。
飲酒の時の気分高揚がそうでない時との対比を浮かび上がらせ、己に何かをもたらす。
この強弱(感動と脱力)が創作時には立派な題材になります。
いつも暖かいコメントとナイスを頂き大変感謝しております。ありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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gt_yosshyさん、確かにおっしゃる通りで酒は人間関係のオイル(潤滑油)にもなるべきものであると考えます。
従って一人で飲むのと複数で飲むのは自ずとスタンスが違ってきます。
私が複数で飲む場合、留意しているのは主観視に走り過ぎない(相手を認める)ということです。
走り過ぎれば衝突が起こりかねない。私はこれをわきまえたかたと酒席をご一緒したいと考えています。
ご質問については自分ではわからない部分(自分で自分の背中は見ることが出来ない)であり人様の決める領域と考えます。感想を頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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和奴さん、わたくしが酒を飲んでいる姿を見たら恐らくがっかりされると思います(笑)
でもそれだけバリアが無くなっているとも思います。じょっぱりは残念ながらまだ飲んでいませんが、名前から言っても非常に気になる酒ですね。
ちょうど三年前の今頃になりますが龍飛という酒の切れ味は印象に残っています。
地吹雪を経験した後に頂く熱燗のありがたみはまさに格別で雪山で見つけた山小屋のような尊さを感じます。
「ハーモニー」というセリフはシンフォニーでは大袈裟過ぎ、パートナーではインパクト不足という客観からチョイスした言葉です。
粒入の塩ウニは酒の肴だけでなく、ご飯のおかずにも逸品という印象を持ちました。コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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好日写真さん、数十年の試行錯誤を経て酒と上手く付き合えるようになって参りました。
これには中国の詩人、白楽天の影響が大きかったと考えております。
コメント、ナイスを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ミックさんおはようございま~す。
お返事ありがとうございます。
解りました.やっぱり..客観視ですネ..そうですよネ。
でも
ひとつの作品を生みだすって云う事は並大抵のことでは
ない事は分かります..
....って云うのは.昔先生から言われて..「黒い蝶」.
ってタイトル付けて...書いた事あるのです..
今思うと.なんて幼稚な..って思いますhttps://s.yimg.jp/images/mail/emoji/15/ew_icon_s319.gif">

愛しい人を黒い蝶にたとえて..
「あなたの羽根が震えると.私の胸が痛みます」..って
いうフレーズ先生は褒めてくれました..。
私ってひょっとして天才かしら?(笑)
..って思ったのもつかの間で.次が出なくて..出なくて.苦しみました。
本格的にやろうとするには.普通の家庭の主婦には無理でした..。
ただ.机に向かったって何も浮かんできませんよネ..
色んな処に自分を置いて.色んな風景眺めたり.音楽聞いたり..文才もなけりゃ書けないし..

ミックさんは素晴らしいです..。

くだらない質問に.一生懸命答えてくれて.
ありがとうございました。https://s.yimg.jp/images/mail/emoji/15/ew_icon_s276.gif">

URL | クリオネ ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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私の場合は何回か禁酒命令がありましたので、お酒の有り難みは本当によくわかります。最近はお猪口3杯くらいに押さえてますが、ほぼ毎日飲んでます。ミックさんと違い生酒のどろっと系が好きなので、日本酒度はマイナスの方でしょうか?エッセイ集で直木賞とか取られるのを期待してます。

URL | 単車男 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ミック様のような紳士的で楽しめるお酒は
身体にも心にもいいですね。
時々ですが、お酒に飲まれて完全に人格が
変わる方をお見受けしますが、あれはよくありません。
お酒は楽しく飲まなくちゃ。
私も日本酒(辛口)熱燗が好きです。 ^^

URL | まゆ ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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お酒を飲むと

ガードが下がり からで覆われた本当の自分が。。。
私は
それが怖くて よそでお酒が飲めません(笑)
本当の自分が なかなか怖いですね。

ミックさんのお酒は 創作活動に結び付いているのですね。いいお酒の楽しみ方ですよね。
一度 からが溶けるまで飲むとどうなるのか 試してみたい衝動にかられます(笑)

URL | つや姫日記 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ミックさん、こんばんは^^

こうして記事を読んでいますと。。。。。。
趣味がとても多くて、それも皆豊かにこなされていて、素晴らしいと思います。
自分だけの殻に閉じこもるのではなくて、色んな方とも交わりを持たれて、良い感じです。
お酒に飲まれるじゃ無くて、お酒を気持ち良く味わっていらっしゃる。。。。。。
そんな感じがします。
エッセイの製本、ナイス!です^^

URL | Rain ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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クリオネさん、ご返事送れて大変失礼しました。創作に関しては自身の環境を見直す(集中できる状況にあるか否か)が重要な要素と思います。
これは煩雑な中で思考を巡らせようとしても無理があるからです。
創作の第一歩は自分のワールドを如何に展開し確保できるか(主観的な目を持つという意味)にかかっているといっても言い過ぎでないと思うのです。
私が川歩きや静かなカフェに行っているのはこのためです。
但し、私にとってのアルコールでのトリップは一見、主観にも客観にもいいように思えるのですが、酔いが醒めてもう一度冷静に見てみると毒を吐きすぎる(自己主張が強すぎる)きらいがあるのです。
従ってこれらの趣味と上手く付き合いながら作品を仕上げていくというのが昨今のスタンスとなりつつあります。
また熱意(テンション)だけは創作活動には最も大切なものと考えております。コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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単車男さん、賞なんてとんでもない話です(笑)
ご自身は酒を百薬の長としてコントロールされているようで、これは大変素晴らしいことであるとお察します。
こうして他の酒好きのかたの嗜好をお聞きするのも昨今の楽しみの一つとなりました。
それだけにご自身のコメント、興味深く拝見しました。ありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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まゆさん、昨今、冬場の辛口の熱燗は肴と一体とも感じているのです。
例えばイカの塩辛にしても市販品の塩気の強いものでなく、イカ墨を入れて味噌風に仕上げたものなどは逸品でまさに酒盗と言えるような代物です。
他に海老ミソや蟹ミソと言った食材もあり通にはたまらない分野です。
酒は常に量をわきまえ、自分を客観視し、スマートに付き合いたいものです。
コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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つや姫さん、人生に於ける酒との付き合いですが、私はこの境遇に到達するまで多くの失敗を経てきました。(笑)
昨今は飲んでくだを巻くのは単なる自分への甘えと感じています。
もっともこれは人それぞれで、批評すべきことではないのは十分に心得ているのですが飲んで、己の煩悩の赴くがままに人様に迷惑をかけるほど見苦しいものはないと考えております。
私の理想は外見からは「あの人は飲んでも飲まなくても変わらない」と言われることで内面が変わったのを自己の範疇に留めることです。
時々毒を吐きすぎるきらいがありますが、私はこの内面の変化を創作活動に結び付けております。
コメントを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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Rainさん、創作活動の第一歩は先ず人様との対話から始まるものと心得ます。
これは他人がどんなものに興味を示すか推し量るのも重要と心得るからです。
但しこれにあまり拘り過ぎると主観(個性)を欠いたものとなり魅力のないものと成り得ます。
このあたりにはバランス感覚が必要となります。バランス感覚は客観視がもたらすものなので、私の場合は川歩き、古美術鑑賞、神社仏閣巡りでこれを得ております。
私のエッセイには主観視に偏ったものも結構多いのでエッセイ集の選考にはバランスが必要と考えています。
コメント、ナイスを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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