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  雪の日の川歩き
「自分には雪だとじっとしていられない妙な癖があった。」これは私が心底尊敬する小説家、志賀直哉(1883~1971)の「雪の日」の冒頭に登場する言葉である。好奇心の塊であった彼はおそらくいい年になっても雪の日はじっとしていられなかったことだろう。
 
波長の合う作家に人は傾注するものである。家庭をなによりも大切にした彼からは会わずとも、多くのことが伺い知れるのである。そんな思い入れもあり、また9連休初日ということもあり、私は早い時間に意中の場所に赴き、風流とも言える雪中の川歩きを楽しんだ。JR仙石線高城町行きに乗った私が下車したのは多賀城駅である。

ここは車では通った道なのかも知れない。でも徒歩で行くとまったくの別世界、建物、看板、立体交差…、すべてが私の好奇心の対象であり胸躍る探検でもあるのだ。

航空写真でこの日のルートをご覧頂きたい。
黄色:JR仙石線多賀城駅、青:JR東北本線陸前山王駅

ここがきょうのターゲットである砂押川である。今まで川歩きとして私のブログに登場した水系は①広瀬川水系②七北田川水系であるがこの砂押川はこれらとまったく異なる水系である。このことが私の好奇心を一層刺激した。

右側杭をよくご覧頂きたい。「波来の地」とある。津波が川を遡上したわけであるが、ここまで震災の津波が来たのは極めて衝撃的なことである。

川の堤に出た私の目に入ってきたのは白鳥のつがいであった。人も鳥も長年連れ添ったつがいを見ると美しさを感じるものであり、心の安らぎを感じるものである。

更に上流に向かった。ここからは住宅もまばらになってゆく。
白鳥のつがいを見た私はとても愉快な気持ちになってきた。

砂押川には多くの合流ポイントが存在するがその多くは鳥の溜まり場となっている。少し寒そうに見えるが彼らは至って元気である。

徐々に道が悪くなってゆく。雪模様ということもあり、人影はまったく見当たらない。道には小動物(狸?)の足跡が残るのみである。

久しぶりに人影を見て安心した。雪かきに精を出す工事関係者には頭が下がる思いであった。勤勉、勤労こそ尊い。人間汗水垂らすのが一番、私自身もこれを心に刻み、現世を迷わずに歩みたい。

工事現場ではコンクリート打設が行われていた。雪の中でのコンクリート打設は私自身、何度も経験しているだけにエールを贈らずには居られないものであった。

工事現場を過ぎ、踏切を渡り振り返ると広大な仙台平野が広がった。
宮城県に生まれて本当に良かったと感じるシーンである。

煙がなびいている場所は七ケ浜の仙台火力発電所のところである。この煙は年中休みなく立ち昇るはずである。私はこの煙を見て身の休まる思いを感じた。

東北本線陸前山王駅、このローカルな駅がきょうの雪の日の終着駅となった。
時刻はまだ10時を過ぎたばかり、雪の日の川歩き、これはけして理屈ではない。好奇心を満たす喜びは当事者にしかわからないものである。
私は大きな収穫を心に刻み、九連休初日の好日に感謝しながら帰路に着いた。

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