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シャーロックホームズの帰還「プライオリースクール」


※ストランド誌1904年2月号発表シャーロックホームズの帰還「プライオリースクール」あらすじ(作成者:横町利郎)

それは1901年の5月半ばのことだった。ベーカー街に学者風年配の紳士が狼狽した様子で訪ねてきた。彼の名はハスクテブル博士、博士は哲学者でもあり英国屈指の名門校であるプライオリー学校の校長であった。到着と同時に気絶した彼はドクター・ワトソンの介護で生気を取り戻す。



我に返った彼がホームズに依頼した事件はある在校生の失踪事件であった。女王陛下の重臣を務めるホールダネス公爵の息子サルタイア卿(9歳)が学校の寮から行方不明になったという



この時、サルタイア卿とともにドイツ人教師であるハイデガーが自分の自転車とともに失踪していた。校長はハイデガーに疑惑をかけるがホームズはこれを否定する



仕事を引き受けたホームズはワトソンとともに英国北部の極めて風光明媚な地に建つプライオリースクールを訪ねた。



ホームズが失踪したサルタイヤ卿の部屋に行くと彼の机の上には家族の写真が飾られていた。クラスメイトによるとサルタイヤ卿の部屋からは毎晩のように泣き声が聞こえたという。どうやら彼は生き別れになった母に思いを寄せていたらしい。



消えたハイデガーの自転車から事件の真相を推理していくホームズはワトソンとともに自転車のタイヤの跡を辿ってゆく。そして地図を見ながら二人は北にいるだろうと推理する。



ホームズはサルタイヤの担任からハイデカーの自転車のタイヤがパーマー製であることを聞く。



この後ホームズとワトソンはホールダネス公爵の屋敷に向った。



ホールダネス公爵は女王陛下の重臣を担う人物であった。



高貴な依頼人にさしものホームズもかしこまる。



そして現地に赴くが発見したのはダンロップタイヤの痕跡であった。



※ダンロップタイヤの起源
1888年、スコットランド人で獣医師のダンロップは息子のジョニーから自転車をもっと楽に速く走れるようにするにはどうしたらいいと聞かれ、その時はただ、「練習しなさい」とだけ答えた。しかし、ある時ジョニーが自転車のタイヤを壊してしまった時に、彼の頭にあるヒントが浮かんだ。それは、タイヤの構造が動物のおなかと似ているという事であった。ジョン・ダンロップは、ジョニーのために獣医である知識を駆使し、ゴムのチューブとゴムを塗ったキャンバスで空気入りのタイヤを作り、木の円盤の周りに鋲で固定した。これが世界初となる空気入りタイヤの発明であり、同年に特許を取得し翌年の1889年にダンロップ社の設立となった。



地図を見たホームズとワトソンはチェスターフィールド街道にある宿屋に事件解決への鍵があると踏んだ。
※宿屋に向かうホームズ(左)とワトソン



ここでヘイズという凶悪そうな男に出会う。彼の腕には不自然な引っかき傷があった。これを二人は見逃さなかった。



そして発見した牛の足跡から、一挙に事件の謎が解ける。ハイデガーは馬に乗せられて連れ去られた教え子を取り戻すために自転車で後を追い、岩場でヘイズに殺されたのであった。
 
 この後、公爵の館の一角に掲示されていたホールダネス家の先祖の肖像を見ていたホームズは重大なことに気づく。なんと事件の背景にホールダネス公爵の秘書ワイルダー彼の実の息子(隠し子)であったという驚きの事実が判明したのである
 
※実はホールダネス公爵の隠し子だった秘書のワイルダー



ワイルダーは腹違いの弟、サルタイア卿に激しく嫉妬し、サルタイヤの実母を別居に追い込み、母を慕う弟の弱みにつけ込んで手紙を捏造し彼を外におびき出し、ヘイズを買収し誘拐させたのであった。すべてはワイルダーが仕組んだ事件であった。
 
※ダンロップタイヤの自転車を駆り、監禁したサルタイヤ卿を連れ出そうとするワイルダー(ストランド誌挿絵より)



警察に追われサルタイアを連れ回し、洞窟に逃げ込み、追い込まれたワイルダーは洞窟の中であえなく転落死を遂げる。しかしホールダネス公爵の最愛の息子であるサルタイアは無事に救い出された。



最愛の息子を無事に取り戻し、ホームズに感謝の意を伝えるホールダネス公爵。



事件解決しホールダネス公爵から1万2000ポンドという約束の倍の謝礼に歓喜するホームズが最後に登場する。「私は貧乏なので…」クールなホームズもやはり人の子であった。

読後感想
文学をどう捉え、どう楽しむのかは各個人でスタンスが違って当然であろう。私はこのシャーロックホームズシリーズに於ける魅力を古き良き時代の英国への回顧と感じている。英国文化には数ある各国の先進とも言える心の余裕を感じるのである。この作品もダンロップタイヤが登場するなど極めてマニアックな内容に満ちている。またホームズやワトソンの英国紳士のファッションも見ものである。ストーリーは意外な方向に展開するがホールダネス公爵の落ち着いた物腰はまさに英国貴族のそれであり十分な権威を感じさせるものがある。20世紀初頭の英国の良き時代を感じさせる名作!
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