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 ADORO FRANCK POURCEL 

 私は昨今ほうぼうの海を見るとある曲を思い出す。特に天気がはっきりしない薄曇りの日、遠くの海原ににぶく輝きを放つ光った海を見ると…。
 
 情熱の裏に潜む悲哀、一見相反するものに見えながら極めて薄く実態のない陽炎で仕切られた二つの感情。その二つの感情に挟まれながら奥深げに流れる人生の哀しいメロディーが突然思い浮かぶのである。


   1972年フジテレビ放映・沖雅也主演「光る海」主題歌「アドロ」和訳 
 
私は熱愛する 私たちが出会った通りを 私たちが知り合った夜を
私は熱愛する あなたが私に言うことを 私たちの幸福な短い時間を 私はいとしい人を熱愛する
 
私は熱愛する あなたがほほえむときの姿を      
私を、ときどき、しかる仕方を 私は熱愛する あなたの手の絹のような柔らかさを かわす口づけを
私はそれらを許容しいとしい人を熱愛する
 
私は死ぬほどあなたを私と一緒にしておきたい
私は死ぬほどあなたから離れたくない あなたの存在がすべてでありあなたの感覚は私の感覚であることを あなたは私の月でありあなたは私の太陽である
 
 あなたは私の愛の夜である 私は熱愛するあなたの目の輝きを
あなたの赤い唇にある甘さを 私は熱愛するあなたがため息をつくときの姿を そしてあなたが歩いているときの姿を 私はあなたを熱愛する 私のいとしい人 
 
私はあなたを熱愛する 私のいとしい人 私はあなたを熱愛する

 あの時のことは今でもはっきりと覚えている。あれは1972年のことだった。ウイークデーのゴールデンタイムに「光る海」(石坂洋二郎原作の恋愛小説)というドラマが放映された。当時高校生だった私はその主題歌にも魅せられこの異色の人気を誇った話題のドラマを毎週楽しみにしていた。
 
 異色というのはこのドラマの野坂という主人公を演じた沖雅也があまりにも男前であり格好が良かったからだ。また相手役の女性には島田陽子と中野良子という当時人気女優だった二人が出ていて、まるで美男美女の共演する話題沸騰の人気番組であった。
                 ※往年の沖雅也

 おおよそのストーリーは彼ら3人が演ずる三角関係がメインのものであったがこのドラマのストーリーが友達との話題に登場するほどであり、おそらく視聴率も相当高かったのではないだろうか?沖雅也は長身と甘いマスクで女性ファンも多かった。また彼の風采や年恰好が当時新任だった物理の若手教師と似ておりこれも話題になったことだった。
 
 沖雅也はこのドラマの後も「太陽にほえろ」に出演するなど大スターの道を歩み出しており、彼の人生は誰がどう見ても順風満帆で前途洋洋に見えた。しかし彼は31歳になった直後の1983年6月、忽然とこの世から消えた。
 
 あの日のニュースに私は自分の耳を疑った。彼は高層ビルの47階から謎の飛び降り自殺を遂げたのだ。私は今までいろいろな人の死に直面してきたが、彼の死はその中でも特に衝撃的であり、その投げかけた波紋は芸能界のみならず非常に大きかった。
 
 …私はここでそのいきさつについては一切述べたくないしまた信じたくもない。「光る海」のテーマソングであったアドロ(メキシコの流行歌)は彼の明と暗を象徴的に表し、人生における無常という名のはかなさを浮き彫りにしているのかも知れない。美人薄命という言葉があるのなら美男も薄命なのだろうか?否はかないから余計美しいのだろうか?
 
 二枚目俳優で売れっ子だった彼がなぜ…この疑問はまるで深い霧のように私の視界をふさぎ、今でも拭い去ることはできない。メキシコはラテンの国であり情熱の国である。好きになった人に心を込めて捧げるこのメロディーは情熱的でもあり、一方で人生のはかなさも感じる。彼の人生もこの曲のように二面性を帯びたものだったのだろうか?…名誉の為に彼の人生を暴くのはこの辺でやめよう。
 
 私は最近行く先で光る海を前にしたとき、その輝きの裏にけして日の目を見ることのない幻か蜃気楼のようなものがかすかに瞼の裏に見え隠れすることがある。
 
 沖雅也と名曲アドロ、一見物静かなメロディーの奥に潜む烈しいこの曲の情熱の炎はけして絶えることなく、これからも彼を永遠の二枚目俳優としてずっとずっと讃え続けることだろう。
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コメント

No title

彼の活躍をTVなどで観る事は子供だったので、あまり覚えている
作品が少ないのですが、再放送などの太陽にほえろや
俺たちは天使だ!などで観たことがあります。
とて甘いマスクの二枚目俳優さんでしたね。
煌びやかな世界にいながらの彼の孤独や激しさ、相対した一面を
感じるような曲だと思います。
哀愁をおびた情熱的なですね。彼の役者としての人生に
重ねさせて聴かせて頂きました。

URL | joeyrock ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

こんばんは。
「アドロ」、初めて聴きました。哀愁を帯びたメロディーですが、その奥底には、激しい欲情が感じられました。
沖雅也氏の自殺は、中学生だった自分もよく覚えております。憂いを帯びた表情で、独特な色気がある男優だったと記憶しています。
人の心の底には深い河が流れていて、他人にははかり知る事の出来ない感情や心理が沈んでいると思います。家族や友人すら分からない、あるいは分からせない感情が誰にでもあると思います。今となっては、彼の心の底は誰にも分かりませんが、深い苦悩があったのは確かと思います。

URL | ひがにゃん ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

joeyrockさん、彼が「光る海」に出演した時の印象があまりにも強かった気がします。
それだけに素顔の彼はこの時の役に近いという印象を持ったのですが…、それにしても残念な最後でした。

改めて今この曲を聞くと非常に奥の深い曲だなという印象を受けます。
まさに恋愛における相手への思いがにじみ出ていますが、同時に人の世のはかなさが見え隠れします。
「光る海」は石坂洋二郎の小説ですが、今となると光る海イコールアドロのイメージが非常に強いような印象を受けます。
なぜなら光る海の煌めきのなかには日の目を見ることのない人間の神秘や秘密が隠されているからです。
私はこの光る海の煌めきが彼の輪郭をほどよくぼかし、永遠の二枚目としてくれることを心から望んでいます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

ひがにゃんさん、深い考察を頂きました。
この曲はラテンの国、メキシコの曲だけに熱烈な求愛の歌なのでしょう。

彼を川に例えるなら我々はその表面の部分しか見ていなかったのかも知れません。
確かに川の表面はその流れを確認できますが、川底が果たして澱んでいるのか川面のように流れているのかまではわかりません。
それだけに亡くなった後のスキャンダラスな内容は目を覆いたくなるものでした。
この光る海の煌めきが彼の過去や秘密をぼかしてくれることを私は望んでいます。
同時に人間の奥底に潜む多重性を考えさせられる彼の死でした。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

沖雅也という俳優と、アドロの曲は知っていましたが、光る海にからむこういう話は知りませんでした…。。。石坂洋次郎の原作を読んでみようかな~。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

boubouさん、彼の死はいまだに私の頭の中で納得できないでいます。
また「光る海」の主題歌「アドロ」が彼の思い出のなかで永遠の輝きを放つことを信じたいと思います。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

ミックさん、この記事、私の記事からリンク張らせていただきます…。。。よろしくお願いいたしのす。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

boubouさん、トラックバックして頂いてもいいですよ。
方法は
①私の記事の最後のほうにあるURLをクリップボードにコピー
②boubouさんがトラックバックしたい記事で修正を選ぶ
③トラックバックの欄で①のURLをコピー
④決定
以上の操作でOKです。
トラックバックは相互のメリットが大きいので是非ご検討されてみてください。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

また、やってみましたが、いかがてだしようか…。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

boubouさん、トラックバックがうまくいくとコメントの後に表示されますが、今回も表示されないようです。
①は最後にあるトラックバック欄の「URLをクリップボードにコピー」を左クリックするとインターネットを開いているところの左上のにURL(アルファベットと数字で構成)が出るのでこれをコピーします。
②この状態のまま、boubouさん側の関連記事で「修正」を選びます。
③その修正画面のトラックバック欄にこの文字を貼り付けるのです。この時に既にURL:と文字が入っているようなので重複してしまうのではないでしょうか?従ってこの場面で一度URL:をクリアしてから貼り付ければOKと思います。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

おっしゃる通りにやっているのですがね~。汗…。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

この画面の下の「この記事にトラックバックする」という所で表示されるアドレスを私の記事の修正で貼り付けたらできましたわ…。。。アドレスが微妙に違うようです…。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

boubouさん、私の説明不足ですみませんでした。
トラックバックありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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