fc2ブログ
 恒例の「めでた掛け」で震災復興と新春を祝う
一昨日の天皇誕生日、私は震災の被害で1年9カ月の間休館していた仙台市内のある美術館を訪ねた。美術館のオープンは9時、善は急げ。この日私は仙台地下鉄南北線を利用し開館時間に間に合うようアクセスした。富沢行きの電車に乗り、降りたのは愛宕橋駅である。

美術館の名は福島美術館、震災によって休館を余儀なくされ実に1年9カ月ぶりに開館したのだ。

目指す福島美術館は若林区土樋のある小路にある。目抜き通りの旧国道4号線から少し入ったところにあるので、知らない人は通り過ぎてしまう。それだけマイナーなところにある。

美術館の周りを紹介しよう。西隣の木塀のその先は哲学者、故阿部次郎宅跡地である。

航空写真で位置関係を確認して頂きたい。
黄色:地下鉄愛宕橋駅、赤:福島美術館、オレンジ:阿部次郎宅跡地

これが福島美術館の外観である。この日は熱心なかたが一番乗り、私はニ番乗りであった。

               福島美術館説明
 
 仙台の経済界を代表する実業家福島禎蔵の趣味が美術鑑賞と収集であった。福島家では禎蔵のの祖父で近代仙台の画家・佐久間晴嶽、得楼たちと親しかった運蔵と、これを継いだ父・惣五郎の代から美術への関心は高く、多くの美術作品を入手する機会に恵まれていた。その親子2代に渡るコレクションを基礎に、禎蔵を取り巻く美術の世界が、更に輪を広げていったことになる。

 コレクションを量・質共に充実させた原因には、主に次の2つがある。一つ目は仙台藩主だった伊達家との交流である。62万石の大大名を誇った伊達家も、明治維新後の社会の推移により衰微を余儀なくしていた。大正時代以来、所蔵する文化財を手放さざるを得ない状況を呈していた。
 
 そこに援助の手を差し伸べた一人が禎蔵であり、その交流を通じて伊達家所蔵文化財の一部が、福島家に納まることになる。こうして流失を免れて仙台にとどまることになった文化財については、伊達家の所蔵品を明治時代に調べた「伊達家観瀾閣宝物目録」に掲載されているものも少なくなく、由緒の正しさを証明するものである。
 
 二つ目は、仙台市内の美術愛好家の集まりであり土井晩翠や木下杢太郎も加わった「是心会」への参加である。仙台を代表する財界・文化界の人々が、それぞれが所蔵する美術品(主に古美術)を持ち寄って、観賞し評価する中で美術文化の醸成を図った本会は、敗戦をはさんだ昭和7~8年と26~38年の2期にわたって開催された。戦前の会には與惣五郎翁、三原良吉氏や亀田兵治氏らを会員、そして戦後は阿部次郎の教え子であり、東北大学で美学とドイツ語の教鞭をとった佐藤明氏もそこに同席している。
 
 単に所蔵するだけにはとどまらない福島家のコレクションには一般大衆への善意を感ずるものである。1972年建設、美術館が出来たのは今から40年前である。

玄関はこじんまりとしていて一般のオフィスビルと大差はない。

 12月19日に再開した当館だがテーマはめでた掛け、これは佐藤明氏によって命名されたもので、掛け軸を展示することにより、来館者とともに新春を祝いたいとの旨によるものとのことである。
 
 実はこの美術館、数ヶ月前に訪れた時はまだ工事用の足場が架かっていた。この「めでた掛け」を広義に解釈するならば、震災被害からの復旧、再開を祝ってのめでたい景気づけを兼ねた掛け軸の展示と受け取れなくもない。

順路は3階からである。この中では突きあたり中央の弁財天の掛け軸が印象に残った。
弁財天の表情が慈悲深い表情に満ちていたからである。

同じく3階の逆方向である。鶴の掛け軸があったが、鶴は縁起物でありめでた掛けに相応しいものに感じた。

これは2階である。ここにも掛け軸が多く飾ってあった。

香呂、右は鎌倉時代の15世紀前半のものである。

これは梅だろうか?やはりめでたい感じがする。

香合

同、ほとんどが由緒のあるものとの鑑定であった。

茶道具もあり、骨董ファンにはたまらないかもしれない。

堤焼(仙台市の北部の堤町で江戸時代に作られた焼もの人形)のコレクション。
この布袋様の絵顔が我が国の未来に福を呼ぶことを切に願いたい。

同じく堤焼、大黒天と鼠、なぜかユーモラスな構図である。

高村光雲、如来坐像、日本人の信心深さを感じる作品である。

これは非常に印象に残った展示品だった。江戸時代から明治時代にかけての仏像の数々、よく集めたのもである。

私は事業で得た財を社会に還元した福島禎蔵の良心を強く感じた。
昨今、神社仏閣巡りに無我の境地を意識し始めた私だが、同時に日本の生んだ芸術である古美術、骨董にももっと目を向け、日本の美しい心に触れ、普遍的なものを鑑賞するような心の余裕を持ちたいと感じたこの日の美術館見学であった。
関連記事

コメント

No title

小生は絵とか美術にはあまり関心がなくて、滅多に行く事はないのですが、今日はミックさんのお陰で鑑賞させてもらいました。昔旅行に行って、島根か鳥取にある足立美術館を訪れたことが思い出されました。
比較的近くにもあるのですが、未だ行っていません。年明けにでも行ってみますね!

URL | 行雲流水 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

伊達家所蔵文化財の一部を仙台の方が所有し、こうやって市民の
目に触れる機会がある事は地元の方にはとても喜ばしい事だと
思います('∀`)
震災後、福島美術館の再館を望まれていた方は多いと思います。
その再館が復旧、再開を祝ってとなれば多くの方に
足を運んで頂きたいですね。
海外の美術館も素晴らしいものが多いですが
日本の美には何か心暖まるものや情緒を感じます。

写真が拝見できて良かったです。

URL | joeyrock ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

行雲流水さん、志賀直哉の影響でしょうか。
最近骨董に興味を持ち始めました。
私はひがにゃんさんのブログでいろいろと教えて頂いているのです。
骨董の多くは歴史とリンクしています。
それをたどって紐を解くのもロマンを感じます。
バイクと骨董はややもすると道と静の両極かもしれませんがそれがまたいいのかも知れません。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

joeyrockさん、前々回紹介した彫刻の美術館も素敵ですが、たまには志向を替えて古美術の世界もいいものです。
古美術、骨董は集中している間になにか神社仏閣巡りにも似た清清した気分になりますし歴史探索にも繋がります。
これは今年新たに発見した志向です。
これが新たな趣味嗜好に繋がればいいのですが。
人間は心に余裕を持つことが大切であることを再認識した昨今です。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

こんばんは。
福島コレクションは初めて知りましたが、なかなか筋の良い道具にみえます。伊達家の所蔵品が多いのでしょうか?明治になり大名家が没落する一方で、力を付けた実業家に名品が移ります。もう一つの流れが廃仏棄釈です。多くの仏像が明治時代に破壊されました。それを救ったのが、美術の価値を知る実業家達でした。 福島家もその一つと言えますね。

URL | ひがにゃん ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

ひがにゃんさん、明治時代の伊達家の財宝の県外流出を阻止したのが福島家でした。
そう言う意味で果たした役割は大きいのかも知れません。
また伊達家としてもこれは本望と言えるのかも知れません。
古美術、骨董はまだまだわかりませんが貴ブログでいろいろと勉強したいと思います。
これからもご指導宜しくお願い致します。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

私も美術館が好きで、あちこちよく行っていましたが、
この頃行っていません。
小さな美術館もいいですね。
そういう所に、隠れた名品があったりするんですよね。

URL | yoko ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

yokoさん、この美術館はしいて言えば古美術の分野に類するものが対象になります。
人ごみに紛れずに、時間がゆっくり過ぎる感覚を味わうには最適な探索と思います。
この日は昭和の古き良き時代に戻ったようなノスタルジーを感じて参りました。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

「めでた掛け」って、いい命名ですね~。。。新春に向けて、復興開館された美術館のテーマに本当にふさわしいです~。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

boubouさん、展示物を見てめでた掛けの意味がよくわかりました。
古美術に親しむ心をもっと磨きたい昨今の私です。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

コメントの投稿

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)