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 暗夜行路のような「無我の境地」を求め寺町へ 
 前回紹介したように、先週の日曜日(16日)の午前中は仙台駅西側を循環するバス「るーぷる」に乗り要所を廻ったが。午後からは西口とは反対側の東口方面の寺町の散策をすることにした。
 
 ここが仙台駅東口である。戦後はバラックの多かったこの界隈も近年は都市計画が進み、目抜き通りは6車線化され、周囲には近代的なビルが立ち並び、もはや仙台の第2の顔になりつつある地域である。

そんな大通りを尻目に昔ながらの小路や横丁も各所に見られる。
旧道を好む私としてはどうしてもこちらのほうに目を奪われてしまう。

まず最初に訪れたのは報恩寺、なぜここを訪れたかというと、近年多くの寺が建て替えられているのにかかわらず、この寺はいまだに昔の面影を偲べる数少ない生き残りに見えたからである。

この界隈の航空写真をご覧頂きたい。赤□:新寺通り、黄色○:仙台出身のある著名詩人の墓のある大林寺、緑□:新寺小路緑道

小路といっても今では道が広くなり、この辺りにしか見当たらない。

 正楽寺、この寺は大変きれいで雰囲気のいい寺であったが、なにか近年建て替えたようであった。文化財に指定されていない古寺、老朽化すれば建て替えられるのは避けて通れないことなのかも知れない。

同じく正楽寺本堂、瓦屋根の入母屋の描くカ―ブは芸術的である。

 神社仏閣巡りが多くなった最近の私だが、以前にも述べたがそのきっかけは志賀直哉の「暗夜行路」である。この作品の中では主人公である時任謙作が尾道や京都の多くの神社仏閣を訪ねるシーンが登場する。
 
 「暗夜行路」の中で私が最も感銘を受けたのはストーリーは終盤のこんなシーンである。それは彼が鳥取県の大山(だいせん)にある大乗寺を訪ねた時、大山登山で体調に支障をきたし引き返した時に登場するシーンだった。
 
 「疲れ切ってはいるが、それが不思議な陶酔感になって彼に感ぜられた。彼は自分の精神も肉体も、今、この大きな自然の中に溶け込んでいくのを感じた。その自然というのはけし粒に小さい彼を無限の大きさで包んでいる気体のような眼に感じられないものであるがその中に溶けていく…言葉にできないほどの快さであった。なんの不安もなく、眠い時に睡(ねむり)に落ちて行く感じにも多少似ていた。」。
 
 志賀直哉は無神論者ということであったが、この時の感覚は仏教の根本思想の無我の境地とも酷似していたのではないだろうか?思うに彼は多くの神社仏閣参りを経験してきて、宗教を抜きにして古くからの日本人の心の安らぎがここにあるのを身を持って感じたのではないだろうか?最近の私も、神社仏閣廻りをした時、なんとなくその気持ちがわかるようになってきたような気がする。
 
 これは「孝勝寺」と言ってこの辺の中で一番印象に残った寺である。

同じく「孝勝寺」、冬空にそびえる五重塔は「暗夜行路」の中の京都見物を連想させる。

これはやや新寺の南寄りに位置する寺で「大林寺」である。
ここに仙台の生んだ著名な詩人が眠っている。

詩人の名は土井晩翠、彼の墓の発見は偶然の発見であった。

彼は夫人と一緒に葬られていた。

土井晩翠略歴

大林寺と土井晩翠の墓を航空写真で確認して頂きたい。
□:大林寺本堂、○:土井晩翠墓

 新寺通りの歩道橋から仙台駅方向を望んでみた。向って左側はマンション街、時折寺、右側は寺が主体といった感じである。そして駅に1キロ圏内という立地、私はこれがこの地域を文化的で高尚な雰囲気に仕立てていると感じた。

間もなく女子駅伝が始まる模様でにわかに交差点にスタッフや警官が集まりだしてきた。
(新寺通り東側を望む)そろそろ退散することにする。

東口のいろんな寺廻りをし、「無我の境地」に浸れた初冬の好日であった。
                       
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コメント

No title

無我の境地とは久しぶりに聞いた言葉ですが
仏教の他にも色々な面で自分を無にして透明な心を深く持つような
たとえでも使われますね。
無になれ、と言われた事があります。寺社巡りは日本人のどこか
奥深い心に眠ってる安らぎを感じるのかも知れませんね。
旅行などでは有名な寺社には立ち寄る事がありますが
近場で自分の住んでいる地にゆかりのある場所も訪ねてみたいと
思いました。

URL | joeyrock ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

joeyrockさん、「暗夜行路」のこのシーン、何度もブログに登場させましたが私としてはそれだけインパクトが強かったのです。
鳥取の大山の大自然の中で自己を芥子粒に例えたり、ナイルの一滴と称した志賀直哉の目指したのは心の平穏であり無我の境地であったと思います。
その意味が最近になってようやくわかりつつあります。
京都や奈良の神社仏閣巡りは夢ですがきっといつかはと思っています。
土井晩翠の墓の発見は驚きましたが、身近なところでも廻ってみるといろいろな発見がありますね。
この日は年末のひと時に心の平静を得ることができた小旅でした。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

こんにちは。
土井晩翠のお墓のご紹介に、思わず<春高楼の花の宴・・・>と、口ずさんでみたくなりました。
<天上影は変はらねど、栄枯は映る世の姿>
今回の新寺小路のご案内と共に、しみじみと晩翠の詩を脳裏によみがえらせました。
慌しい年の瀬の静かな小路の探索にMN!

URL | はぐれ雲 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

土井晩翠のお墓は仙台市街にありましたか…。。。地方の都会は、このように必ず古い一画が残されているのが好きですね~。。。

URL | boubou ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

はぐれ雲さん、土井晩翠は仙台の都心の中の墓地に眠っています。
ここで彼を偲ぶ時、今でも荒城の月の詩が甦りますね。
小路とは名ばかりの広い4車線の新寺通りですが、上から5枚目の新寺小路緑道にわずかな往時の面影を見出したこの日の探索でした。

MNありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

boubouさん、仙台の東口は戦災はあまり受けなかったのですが、都市計画で大幅に生まれ変わり、この辺は碁盤の目のような感じです。
この辺の寺町の分布は東西よりも南北に広がっていると思います。
仙台の寺巡りとしては北部の北山五山とともにメジャーなコースになります。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

こんばんは。
仙台には立派なお寺が沢山有るのですね。
京都は勿論、素晴らしい寺社が有りますが、尾道もなかなか趣があります。大学時代は、よく尾道に出かけてお寺巡りをしました。高台から眺める瀬戸内の景色も素晴らしいです。
志賀直哉同様、私も大好きな街です。

URL | ひがにゃん ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

にがにゃんさん、骨董収集や社寺廻りを行った志賀直哉の気持ちがよくわかるような気がします。
特に今の季節は身も心も引き締まり晴れた日の神社仏閣廻りは最高ですね。
彼は世俗的なもの以外にこういった普遍的なものも求め作品に著しました。
定年したら京都、奈良、尾道の彼の足跡をたどる旅をしてみたいですね。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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