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 屋敷を護ってきたイグネとモミの木
 この写真は今年の5月27日私が散歩の途中で見かけたモミの木である。枝ぶりの見事な木で、その大きさからは樹齢は200年はくだらないようである。人間で言えば壮年といった印象で、周囲に大きな存在感を放っている。このモミの木、実はこの家の暮しに大きな役割をになってきた。
 
 それは屋敷林の主(ぬし)としての働きである。周囲は植林されたと思われる杉林、その中でこのモミの大木はリーダーのような役割を演じてきたのだろう。私が今年の5月に足を運んだ時は木立の中から「ピーヒョロロロ」という鳶の鳴き声も聞こえ、長年に渡って多くの鳥や虫の生命をはぐくんできた大黒柱のような貫禄が伺えた。
 
 郷土史を調べるとこの辺は江戸時代には既に農地で、稲作を営んでいたようである。おそらく地主の農家は先祖代々のこの地に居ついて相当長いのではないだろうか?子供のころからこの道を通って住居の周囲を取り囲む屋敷林を見るとそんな思いがしていた。その貫録あるモミの木がこの都度間引きされることになった。その理由は屋敷林の北側の民家に陽が差さなくなったからとのことであった。
 私は改めて北側からこの農家の屋敷を望んでみた。比較的新しい家で近年建て替えられたようであるが、今までは屋敷林の存在のために家ははっきりと伺い知ることができなかった。今回の枝の間引きでこの情景はまったく変わった。間引きされた北側の林の木立の合間からこのように屋敷がはっきりと見られるようになった。

切り株が残っているのを見ると、枝の間引き作業の他数本の木が切られたようだ。
屋敷林の中にある社殿の跡を見て頂きたい。
実はこの社殿も今回の林の間引きに伴って別の場所に移設されていた。

さっぱりとし過ぎた感は否めないが、やはりこの林の中ではモミの木はダントツの存在感を放っている。

中央やや左に小さな社殿のようなものが見えるがこれが屋敷林の中から移設されたものである。先祖代々続く農家にはこういった社殿を有する家が多い。

 これはもう一ヶ月以上前のことだったが、無残にもモミの木のてっぺんの部分が切られていた。この木は幼い時から慣れ親しんだものであったので非常に寂しい気がする。でもここは住宅地であるがゆえにこれも住民の意向に沿った措置で、地主にとってはやむを得ないことなのかもしれない。

 枝やてっぺんを切られながらもなんとか生き延びたモミの木、彼は屋敷を護るために植えられ、やがて周囲の住宅開発によって枝葉を切られた。しかしながら、彼は切られながらも生存は赦されたのである。これは不幸中の幸いと思わなければならないのだろう。
 
人間の都合によって翻弄された彼の人生だが、今生かされていることに感謝する気持ちが湧いてきた。私にはそんな彼が愛しく身近なものに感じられてならなかった。
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コメント

No title

こんばんは。
小さい頃から慣れ親しんだ景色が変わるのは、寂しいものですね。壊されるだけでなく、逆に建物が建てられて変わる時も有りますね。
伐採前の屋敷森、立派ですね。確かに日当たりも悪くなるかもしれませんが。今後のモミの木の運命はどうなるのでしょうね?

URL | ひがにゃん ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

モミの木、あるがままの姿ではなくなって、残念ですね。何とかそのままでは駄目だったのでしょうか?
200年もの歳月をかけて出来上がった姿、モッタイナイと思いますねぇ~!!!

URL | 行雲流水 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

ひがにゃんさん、この屋敷林は北西からの季節風を防ぐことよりも北側の住民の居住性を考え、間引き、一部伐採されたものと思います。
時代と共に美しい屋敷林が失われることに一抹の寂しさを感じたこの日でした。
モミの木は格好悪くなってしまいましたが、しばらくはこのままだと思います。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

行雲流水さん、先祖が残した屋敷林ですが、北側の住民にとっては日照をさまたげるものになっていたのですね。
居住性が優先された今回の決断ですが、少し寂しい思いがします。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

長年、多くの役割を果たしてきたモミの木が残念ですね。
これだけ長く存在してきた大木は昔で言う守り神のような気がします。
別の場所に家を建て替える事も出来なかったのだろうか、と
思ってしまいますが住んでいる方には日当たりが悪くなるのは
大きな問題だったのでしょうね。
伐採前を見てしまっただけに寂しい感じもしますが
残されたモミの木は変わらず育っていて欲しいです。

URL | joeyrock ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

joeyrockさん、一番下の写真の赤い屋根の家が建ってから相当な期間が経ちました。
この間はこのモミの木で日照が遮られていたようです。

お気づきかも知れませんが、一枚目の写真は半年前の5月27日アップした「とべとべとんび」に掲載したものです。
切ってしまったモミの木にはとんびも当分寄りつかないかも知れませんね。
枝をまた盛り返して欲しいものです。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

こんばんは。
モミは均整のとれた円錐形の姿が美しい木だと思っておりますが、その先端部分を斬られては台無しですね。
強い風から家を守ってきた屋敷林の佇まいを残して欲しいですが、やはり住宅地への日当たりが優先されるでしょうか。
人の暮らしが変化して、寂しいことにも出会いますね。
モミの木の再生願ってナイス!

URL | はぐれ雲 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

立派な形のいいモミの木だったんですね。
すごく残念ですが、残されて良かった。
ミックさん、これからも見守ってあげてくださいね。

URL | yoko ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

はぐれ雲さん、間引き、伐採される前のイグネはモミの杉も一体になって一本の木にも見えます。
それだけに間引き伐採された跡はなにか寂しい気持ちになりますね。
長い目で再生を見守りたいと思います。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

yokoさん、私は農家のイグネを見て廻るのが大好きで過去に何度かイグネに纏わる記事を掲載しています。
イグネは財産であり日本の美でもあるので、今回は少し残念でした。
見守りは是非やっていきたいですね。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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