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 ニーチェ著「ツァラトゥストラ」とは?
フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(1844~1900)

 ある書店で超訳「ニーチェの言葉」という本を見つけた。その著の内容だが、彼の独創的な言い回しに興味はひかれたものの大雑把に言って7割かた支持、残りの3割は首をかしげた。首をかしげたというのは全部を肯定できなかったからだ。
 
 例「おしゃべりな人は隠している」…自分についてしきりとおしゃべりばかりしている人は自分の本性、本心、正体を隠している。特に嘘をついている人は普段よりお喋りが多くなる。それは相手にたくさんの些細な情報を与えることで相手の意識の焦点をそらし、隠し事を発覚させないようにしているためだ。
 
 上げ足を取るようで大変恐縮だがこの書き方だとおしゃべりな人は全てが隠し事をしているようにもとられ、私は少し表現が違うのでは?と思った。もし私がこの言葉の真意を掘り下げるなら、読者に誤解を与えないように「おしゃべりな人は真理を隠そうとし、多弁になる心理が働くこともあり得る。またはおしゃべりの人の中には、常にそういう心理に見舞われる人が存在する。」と表現するだろう。
 
 しかしながら歯に衣を着せない彼のストレートな表現は的を得たものも多く、けして既成の常識にとらわれない独創性に満ちている。これは論語に見られる世間一般の良識とされる概念と明らかに一線を画すものである。
 
 「なにも全部が全部受け入れられなくてもいい…」私は彼の理論の全体の七割、六割でも頭に入ればいいという考えになり、急きょこの本の購入を決めた。

 この本はその2も出ているようだがとりあえず一通り目を通してみた。そして20世紀の日の出を見る前に没した稀有なる天才のことを少し探ってみたくなり間髪を入れずにこの本も購入した。NHKテキスト「ニーチェ、ツァラトゥストラ」西研著がそれである。

 本書ではニーチェの著書「ツァラトゥストラ」を通した彼の思想がわかりやすく解説されており、哲学初心者の私にも親しみやすく配慮されているのがうれしい点である。また生前彼と関わりの深かった音楽家ワーグナーらとの親交のことも書いてあり興味深い。イメージ通り気難しい彼は友人が少なく、腹を割って話せる人間は生涯ごくわずかだったようだ。
 
 若くして聡明だった彼は古典文献学の研究に身を投じ、わずか24歳の若さでスイスのバーゼル大学の員外教授に抜擢された。この時、前途洋々に見られた彼だが28歳の時に執筆した処女作「悲劇の誕生」(ソクラテス批判などをした著物)が問題作になり大学に籍を置けなくなってしまった。彼は1879年に学校を離れると体調も悪化、「悲劇の誕生の」悪評もあって彼には誰も見向きしなくなった。

 イタリアやスイスの各地を転々とさまよい歩きながら生きる彼に再び大著執筆の機会が巡ってきたのは1883年、彼が39歳の時だった。この時、彼はわずか十日間という驚異的な速さで「ツァラトゥストラ」の第一部を完成させる。その後、1885年に第四部を完成させる。
 
 その後1889年に精神に異常を来たすまでに書いた作品は「ツァラトゥストラ」を追随するものがほとんどであったようだ。
 
         「ツァラトゥストラ」概要
 
①ルサンチマン(うらみ、ねたみ)の克服→②価値転換(人はキリスト教を頼っての善や真理にとらわれず、自ら創造性を発揮していかなければならない。)→③神の死(ニヒリズム、安楽の否定)→④永遠回帰を受け入れての超人への移行(人生は善しも悪しきも永遠に繰り返すのもであり、それを受け入れてこそ超人になり得る。)
 
           読後感想
 
 毒舌のニーチェに敬意を表し、私もはっきりと申し上げる。何事にも動ぜず、しっかり自立して生きて行こうという人、既に強い自我が確立した人にはこの思想は無用かも知れない。だがキリスト教が全てだったこの時代にそれを批判し、自立の心を解いた彼の論理は極めて独創的であり、注目に値する。それだけにこの後の社会に及ぼした影響は計り知れないものがある。
 
 ニーチェ理論を肉に例えれば著者の西研氏の理論は肉の消化を助ける野菜のような役割を果たしていると私は考える。西研氏はニーチェの難解な理論をかみ砕いて読者に教えるのみでなく、ニーチェの至らない点(孤独にならずに人と対話を進めながら生きるとこの大切さ、人の話を聞き取ろうとする姿勢の大切さ)を述べており、見事にカバーしている。
 
 本書はニーチェの理論書として読むのもいいが、人生の指南書として読むのもいいだろう。
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コメント

No title

今晩はo(^▽^)o

訪問、コメントありがとうございます。わかりやすく、ニーチェの言葉をただ、ただ読んでいましたが勉強になります。

深く探求していませんが、格言や言葉の本はなぜかヒントを含んでいるので不思議に思います。

URL | mamiya ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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mamiyaさん、解説付きの著を読んで初めてニーチェを理解できたような気がします。
「ツァラトゥストラ」は読書の途中で矛盾を感じ、これ以上読むのがまどろっこしくなりました。
正直読むのをやめようと思いましたが最後まで読んで良かったと思います。
PS:ニーチェの言葉その2も出ているようです。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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イエス・キリストは、彼にとっては敵であったのでしょう。汝の隣人を愛せよ、とイエスが言うと、彼は、隣人でなければ愛する必要はないのかと訊くでしょうね。事実、キリスト教徒は歴史上、隣人でない者達を攻めて殺してきていますね。

URL | 行雲流水 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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こんばんは。
ニーチェは難解です(哲学はどれも難解ですが)が、近代の偉大な哲学者といえると思います。
実は、世の中の真理は、身近にあり、哲学者は、それを見つけて、行き方を教えてくれる存在、と私は解釈しています。全てに納得いかなくても、分かる部分だけ参考にすればよろしいのかな?と思います。

URL | ひがにゃん ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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こんばんは。
ニーチェと聞くと苦手意識が先走ります。
偉大な哲学者でありながら心の中へ入ってくるものがなく、いつも傍らを素通りしているような気分でいます。
ですが共感を得られる方向ばかりに顔を向けていては、独りよがりのままに終わってしまいそうで、やはりニーチェと対峙しなければ思考に広がりが生まれてこないと反省中です。
意義深い記事を読ませて頂きました。MN

URL | はぐれ雲 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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この本は読んだことがありませんが、彼の残した言葉や思想は
色々な場面で出会うことがあります。
彼の言葉をそのまま共感すると言うより、色々な視点で
自分との考えを比べたり、参考にする部分があります。
様々な理論や考えを追求する事は自己への発見にも繋がるのかも
知れません。

URL | joeyrock ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ミックさん、おはようございます。

皆さんの様なコメントは私には書けませんが、哲学に興味がないわけでは有りませんが、もうこの歳では如何せんです。

今は、写真雑誌を読むぐらいです。こんなコメントで済みません。

ナイス!です。

URL | 好日写真 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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行雲流水さん、宗教における教典(キリスト教なら聖書)と現実社会との違いはキリスト教に限らずどんな宗教にも見られることですね。

今回ニーチェの言葉で私が注目したのは「世間には注目されたい人間がいっぱい居て、それぞれに自己主張をしている。しかしそれらは皆自分だけが注目されるべき役者だと思っているので結果的に観客が居ないということになる。」(長文を要約)という言葉でした。
聞き手になることも大切と彼は言いたかったのです。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

ひがにゃんさん、結果だけを言えば既に自我を確立している人と同じ真理にたどり着いたことになりますが、永遠回帰の中においてネガティブなものも愛せと言っているところは独創的であり、ある意味で宗教的なものも感じました。

本書は難解なツァラトゥストラを100ページほどに集約し、ニーチェのたどった人生を追いながら彼のの舌足らずの部分を西研氏がうまくカバーしており、読みやすく非常にいい著物であると思いました。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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はぐれ雲さん、MNありがとうございます。
読書の動機ですが、今までは論語や史記など中国の古書に注目してきましたが、今回西洋のものにもっと目を向けようと思い、ニーチェのさわりの部分に触れてみました。

「ニーチェの言葉」超訳がどれほどまで原文に忠実なのかはわかりませんが、もう少し直せば七割かたといった率が上がるのかも知れません。
でもそれはニーチェの本意とは違ったものに成りかねないので難しいところです。
いずれにしても儒教の流れをくむものとは異質のものがたくさん出てきており、内容も現代社会にフィットしたかなり踏み込んだものが多いので一度引き込まれるとハマりやすいと言えそうです。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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joeyrockさん、今まで主に中国の古書に目を向けてきた私ですが見聞を広める意味でニーチェに触れてみたくなりました。
彼の遺した言葉は人間の深い真理に及んだものが多く中国のものとは全く違ったものを感じました。
それだけに「踏みこんでいる」と言えます。

社会と孤立しながらもソクラテスやキリスト教を批判した彼の精神(哲学者魂)は敬服するものがあります。
概ねそうですがこういう突出した思想が社会に受け入れらるには時間がかかります。
今、彼の残した言葉を一つ一つ噛みしめる意味でこの超訳をもう一度読んでみたいと思います。
彼の人生の軌跡を知った後だけに、なにか最初と違ったものが残るのかも知れません。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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好日写真さん、ナイスありがとうございます。
彼の遺した言葉があまりにも独創的なので探ってみたくなりました。
また現代社会との接点が多いのも魅力です。
突出した先見性は発表当時はどうしても受け入れ難いものになりがちですね。

貴ブログのきれいな写真、いつも楽しんで拝見させて頂いております。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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こんにちは。

私が、この本に出会ったのは、スピリュチュアルの本を読みあさった後です。 感想は、ただ 単純に「ふ~ん、面白い」と。だから、読んでいても、あまり深く考えずに 「なるほど~」と思うぐらいかなぁ?

ミックさんのブログを読んで、勉強しますね。

お気に入り登録させて いただきますね。

URL | おったん ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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おったんさん、初コメントありがとうございます。
ニーチェですが私の場合も「ニーチェの言葉」から入りました。
こういうはっきりとものを語り、しかも独創的なものは好きですね。
この後ニーチェ自身のことが気になってこのツァラトゥストラを購入しました。

スピリュチュアル、知恵袋で調べましたが宗教的で霊的なことということですね。

ファン登録ありがとうございました。
私もさきほどお気に入り登録させて頂きました。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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「ニーチェか、サルトルか、みんな悩んで大きくなった」

今更ながら、素晴らしい一文だと。

すみません。それぐらいの知識しかありません。

ミックさまの記事を読み、括目すべきは、「ニーチェも、悩める青年」であったという事。

そしてミックさまが、批判だけではなく、取り入れるべきエッセンスを見出していらっしゃるという点。

「超人」。久々に聞きました。ニーチェに会いに行きたい(読書等)と思いました。

URL | yam*bu*i_fl**er ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ヤマブキさん、私もニーチェ初心者です。
そのきっかけは本屋での立ち読みです;
「ニーチェの言葉」を見つけて「難しそうなことを言っているニーチェの成果物とはなんぼのもんじゃい?」という気になったのです

読んでいくうちに批判と共に東洋哲学にはないような人間の奥底に潜む深い真理を突くような強烈な言い回しが私の目に止まりました。
これは買うしかないと思って衝動買いしてしまったのです。

彼の活動は実質的に精神に異常をきたす45歳前までで、やや未熟な面も見られますがハマってしまえばアバタもえくぼになり得るのかも知れません。
これまでの概念に捉われない刺激を求める意味で本書は良書であると思います。
PS:「ニーチェの言葉そのⅡ」も販売中です。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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ミックさん こんばんはぁ~☆!

恥ずかしながら、ニーチェは読んだことが
ありませんでした。
でも、今日ミックさんに解説していただいて、
ニーチェにとっても興味を持ちました。

哲学を紐解いて、人生を生きる為の指針にする
ことは、私としては、とても大切なことだと
思います。

ニーチェの本はとても難解な気がしますが、
今度、是非読んでみたいと思います。

ナイス!!

URL | Maya ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

Mayaさん、ナイスありがとうございます。
昨日本屋に行ってみましたが哲学のコーナーでニーチェの本が多いのには驚きました。
彼の哲学は批判も多く含まれていますが、非常にユニークで既成概念に捉われないところが大きな魅力です。
私もそうですが、まずは「ニーチェの言葉」から入るのがベターのような感じがします。
そうすれば意外と垣根が低いのに気が付くと思います。
現代にも通用するようないろいろな言葉を残している点がうれしいですね。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

No title

ミック様へ
映画『2001年宇宙の旅』はこのニーチエの『永遠回帰を受け入れての超人への移行』の考えを根底に置いて製作されたと云われています。そのため、リハルト・シュトラウスの『ツラトウストラはかく語りき』という楽曲をその物語の展開毎に入れています。それほどこの曲が必要だった。この映画の中で猿人が人となり。現代において人が人を超える存在になる。そんなテーマの映画でした。これホント難しい。勉強になりました。ナイスです。有難うございます。

URL | 不あがり ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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不あがりさん、返事が10ヶ月も遅れて大変失礼しました。今からリハルト・シュトラウスの『ツラトウストラはかく語りき』という楽曲をYOU TUBEで聞いて参ります。
本日は失礼仕りました。コメント、ナイスを頂きありがとうございます。

URL | 横町利郎 ID:79D/WHSg[ 編集 ]

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