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 夕焼けがきれいな晩だった。週末の薄暮、夕日と雲の織りなすファンタジー(幻想曲)が私を魅了した。ピンクから紫、ブルーへと到る様々な色彩は人間の奥底に潜む複雑な心理とも似ていた。
 
 日中は大空の片隅に漂うだけだった浮き雲が夕がたになって主役になった。やがて浮雲は夕日をいろんな角度に反射させ、たそがれの空を七変化に演出した。私はその感動を幻想曲「Charitos of Fire」に重ねた。その雲のさまは様々な楽器の複合体である大オーケストラを自在に操る名指揮者のように思えた。

 時刻は七時前、男は夕日と逆の方向に目を向けた。東の空はコバルトブルーからダークブルー(群青色)へと変わろうとしていた。、それは夕日とは全く対照的であり、孤独と至高を思わせる色だった。仮にここに一端の雲があろうがさほど目立つことはあるまい…そのような今の彼の心境には群青色が最も似合うのかも知れない。
 
 群青が元来持つその落ち着きと暗さは少しずつではあるが、黄昏の今を確実に夜の闇へと導き、やがて彼の心の不安をやわらげ紛らわせてくれることだろう…。
 
 そんなことを考えているうちにいつしか周囲には「群青の夕闇」がせまっていた。彼は東に向って目を閉じ瞑想にふけった。そこには焦燥と不安にかられながらも、一筋の群青色の果てなき道を黙々と歩む自分自身の分身が居た。

 男の心が元通りのライトブルーに戻るのはいつになるだろう…もちろん結論は出なかったが頭の片隅にはある思い浮かんでいた。
 
 『この世には似たようなことはいっぱいあるだろう。だが自分の人生は無双であり、全く同じことはけしてありえない。だからこそ、己の人生は人に頼ることなく自分で切り開かなければならないのだ。そのために今与えられた時間を無駄にすることなく一生懸命生きよう。さすればいつの間にか不安や焦燥から解放され報われよう。』
 
 この先にはまだまだ煩悩に苛まれることだろう。今宵はこの煩悩がもたらす焦燥から解放されたかった。 だがこれを天命と受け止め、けして後ろを振り向かず立ち向かっていくことだろう。
 
男は薩摩焼酎「薩摩無双」35度の栓を抜いた。
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