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  蔵元のカフェに漂う文学の香り
ここは先週の日曜に訪れた岩手県一関市の蔵元、世嬉の一(せきのいち)の一風変わったカフェである。

教え子を愛した島崎藤村が傷心の身で訪れた一関にはまさに奇なる縁があったようである。

その五十数年後には井上ひさしがこの蔵の中の映画館でアルバイトをしながら時折、自身も映画に見入った。

そんな由緒ある蔵の中にあるカフェならば行ってみるしかあるまい…
このカフェに行くには蔵もと「世嬉の一」の酒販売コーナーから入っていくのだ。
職員のお姉さんが私を迎えてくれた。

太宰治は弘前中学(今の弘前高校)時代に入りびたったとされるカフェとはどんなものだったのか?
当時のカフェは今で言うカフェとはまったく違い、酒も出され女給さんが接客をしていたという話を聞き、私は以前からこの種のカフェに非常に興味を感じていた。

そしてこの店は私の期待を裏切らなかった。
これぞ私が期待していた昔のカフェである。
客は私以外誰も居なかった。
小上がりのところにあるオルガンがいい感じであり私を大正ロマンに誘ってくれた。

店内の曲はもちろんジャズ、太宰もこんな洒落た空間でジャズに聴きいったことだろう。
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私は躊躇なく世嬉の一純米吟醸酒を注文した。
昼酒を飲んだせいだろうか…
少しだけ酔いがまわって来た。
 
私は文豪太宰に思いをはせ、彼がよく遊んだとされる大正時代のカフェにトリップを試みた。
ロマンチストであり、気の弱く優しい彼にはこんな店がしっくり来たのだろう。
ここで彼は酒に酔いながら竹下夢二のような理想の女性像を心に抱き幻を見たことだろう。
しらふから解放された彼は道化を演じなくても済む自分に胸を撫で下ろしたことだろう。
 
休日のひと時、悠久の時の流れの中に身を委ねるならこんなシチュエーションも悪くないだろう。いつの間にか時はゆっくりと流れ、ジャズ特有の「けだるい余韻」が私の魂を快く包んでくれていた。

すっかり酔いのまわった私は徒歩で一関駅前に向った。
途中の岩手日日新聞の本社ビルの日の丸が青空にそびえていた。
私は歴史と文化が薫る一関に後ろ髪を引かれながらも別れを告げた。

一関探訪シリーズ            
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