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見えるはずのない歯車が見えたとき…

              昭和二年、芥川龍之介作「歯車」
                    粗筋
 見えるはずのない歯車や鱗のついた銀色の羽根…ホテルの一室に滞在しながら小説を書く私は幻覚に悩まされていた。そしてレエンコートを着た謎の男が時折現れるが、その正体は自殺した義兄の幽霊とわかり私は恐怖におびえる。
 
 ホテルに滞在しながらある日外出した私はあるキリスト教信者からこう言われる。「陰(悪魔)を信じるならば光(キリスト)も信じずにはいられないでしょうそれに対して私はこう答えた。「光のない暗(闇)もあるでしょう。」…
 
 私には神の存在が信じられなかった。そして幻覚は更に顕著になってゆきこう思った。
「私はもうこの先を書きつづける力を持つていない。こういう気もちの中に生きているのは何とも言われない苦痛である。誰か僕が眠つているうちにそつと絞め殺してくれるものはないか?」

                     
                      読後感想
  消えうせる運命にある風前のろうそくの灯は消える前に一瞬だけ輝くものであるその一瞬の輝きを表した作品が本作「歯車」である。羅生門に代表される芥川文学はストーリーが通ったものとして他の追従を許さないものがある。
 
 それに比べてこの作品は自殺する一ヶ月前に書いたせいか、芥川の外国文学に関する深い造詣が現れてはいるものの、支離熱烈でストーリーが通っていないのだ。もし通っていると感じたならその人は自殺願望者に違いない。天才作家の死に際は不思議なほど似ている。太宰治が死の直前にアルコール、ドラッグづけになったように芥川の死の直前も全く同様だった。
 
 芥川が右のまぶたの裏に見た歯車とは一体何なのか?それは超天才作家のなれの果て…作品を描けなくなった自分自身の過去の影へのおびなのかも知れない。
 
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