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去る4月21日、私は久しぶりに生家のあった石巻市旧横町(現千石町)を訪ねた。これが平成最後の訪問となったわけだが、この九年間(2010年~2019年)の移り変わりは目まぐるしいものがあった。震災前の2010年5月に撮影した旧横町をご覧願いたい。斜陽とは言え、かつての商店街の面影を感じなくもないものがあった。


1二千十年五月の横町


これは現在の旧横町である。大変残念だが、8年前の震災で近代の斜陽傾向に更に拍車が掛かった感は否めない。空き地が多く人口減少が進んだようだ。


2二千十九年四月生家前 


現在の石巻の市街地は旧市街地のある石巻駅に隣接する立町商店街から、イオン石巻などがある国道45号線西側に移りつつある。我が横町もそのような大きな流れには抗えず、かつての花街の面影はすっかりなくなってしまった。すぐ近くの住吉神社では盛り土による大規模な土木工事が行われており、これからの横町がどう変わって行くのか非常に気になるところである。


港町に花街はつきものと言われる。小説家の徳田秋声が描いた「縮図」の舞台のモデルとなったのがまだまだ花街の面影漂う昭和初期の石巻だった。港町という風土が生み出した「縮図」今では死語となった男尊女卑がまだ続いていた頃の話の筋書きであった。「縮図」であるからには古今東西を問わない普遍性が存在する必要性があるだろう。この小説はそんなことを感じさせつつも、創作とはいい難い非凡な作品であった。そう言えば自分の曾祖母Mも或る人物の妾だったと聞いている。「縮図」のヒロイン・銀子とは時代が違うが、或いは銀子のような一生を送ったのかも知れない。


藩政時代の石巻を振り返れば、東回り航路によって拓かれた江戸への海運が港町・石巻の生命線であった。町には江戸中期の港町石巻には湊、本町、住吉の三箇所に藩の米蔵があり、湊御蔵は18棟で計5万俵、本町御蔵は9棟で計2万俵、住吉御蔵は18棟で計6万5千俵で合計13万5千俵の米を収納できたとされる。その住吉御蔵のあった場所が現石巻市立住吉小学校(私が小学校1年~3年まで在籍)である。住吉小学校の東の端(川沿い)には「仙台藩米蔵跡」の石碑が建っている。


住吉御蔵は1717年(享保2年)に建てられ、蔵の傍には船着場があった。船は仙台藩のものだけではない。上流からは南部藩の平田船で運ばれてきた米俵も陸揚げされ、当時は昼夜を問わず人足の稼働があったという。石巻の繁華街の形成はこうした港町特有の進取の気風が支えてきたに違いない。私が生まれた頃は微かながら、こうした景気のいい時代の石巻の名残が存在した気がする。


さて、横町(厳密には旧横町)に話を戻したい。自分の少年時代にはT花屋の同級生M君が居て徒競走が速かった。彼は町内対抗でいつも選手に選ばれ、ぶっちぎりとまでは行かないものの、いい線行ってた気がする。M君には兄貴が居て運動神経も良かった。また笑顔も素晴らしくクラスでは人気者だった。そんな彼に一目逢いたいと思い、震災後に同じ名前のT花屋(石巻市中央で彼の親戚筋が経営)を訪ねたが、ここで聞いたのは残念ながら彼の訃報(彼は四十七、八で早世したとのこと)だった。人間万事塞翁が馬とは言え、M君の死は余りにも虚しい。生きていて再会すれば積もる話もあったであろう。それが叶わなかったのは無念である。


※生家の辺り(昭和五十年代半ばの撮影と見られる)

1生家横町原図


自分は兄弟が居なかったが少年時代の友人は結構居た。かつて放課後にI君との小舟遊び(北上川に木っ端の小舟を浮かべて石をぶつけて先を争う遊び)を紹介したことがあったが、そのI君の所在もわかっていない。フェイスブックなどを使えば或いは見つかるのかも知れないが、一分の望みに懸けたい気がする。


横町挨拶

自分が生家横町に住んだのは長い人生の中の一部であり、僅か七年くらいの間のことでしかございませんでした。それでも、自分は自分はこの町に限りない愛着を抱いています。司馬遼太郎は「人間にとって幸福なことの一つとして故郷に関わった人生を送ること」を挙げていますが、今の自分もまさしくその境地にあります。特に同郷の人には限りない誼を感じているのです。思い起こせば祖父母から受けた返しきれないほどの恩愛の、せめてもの償いが郷土史の研鑽であり、創作活動であり、与えられた人生を感謝して真っ当に生きることです。


自分が後何年生きられるかはわかりませんが、還暦を過ぎてからの人生はこのようなことに割り当て、それまでのテイク中心の生き様を改め、ギブを中心(現世や将来の人に何を残せるかを己の胸に問い、他人の役に立てる余生を送れるようして行く)にして参りたい所存です。本日も最後までご覧頂きありがとうございました。


9五百六十横町挨拶 

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