散歩でいつものように、少年~青年の頃に通っていた床屋に出向く
Wednesday Night
リンク曲について
数十年もの時を遡るとき、静かに聴きたい曲がある。自分にとってのそれが、このWednesday Nightである。水曜ロードショーのオープニング曲として有名だが、過ぎ去りし日々を辿るのに相応しい曲がこの曲である。イントロには口笛が入るが、少年時代の自分もよく口笛を吹いた。あの頃の自分はそれだけ将来を楽観していたのかも知れない。
人生の行く末に何が待ち構えているのか知る由もなかった頃のことである。そんな自分もあっと言う間に年を取った。ウイークエンドとなった本日は少しセンチメンタルな気分に浸りつつ我が少年時代~青年時代のことを思い起こしている。
自分が間もなく定年に達しようとしていた数年間、散歩でよくこの床屋の辺りに足を運んだ。もしかしてこの床屋を経営している老夫婦と逢えないか?という期待からである。自分は定年前の1年半の期間、福島県勤務を言い渡されたが、週末に仙台に帰る度にこの床屋のことが気になり、いつしかこの床屋の前を通ることが散歩の定番コースとなっていった。
例え夢でもいい。今度こそサインポールが回ってないだろうか?その期待は遂にかなわなかった。残念ながらこの家には人の気配がないようだ。
この床屋に初めて足を運んだのは私が中学生の時だった。その頃、この床屋の夫婦は四十代前半だったと記憶している。もちろん年を聞いたことなどないが、自分との年齢差は三十前後はあったと思う。然らば存命していれば、とうに九十代となっているはずである。あのご夫婦は今頃どうしているのだろう?
旦那は鼻筋が通っていて、細見できりっとしたかただった。巨人軍の王選手と似ていた記憶がある。奥さんは髪を茶色に染め、きびきびとしたかたで、今思えばなかなかお似合いのご夫婦であった。学生の自分は世間知らずだったが、奥さんからはよく話しかけられたものだった。
価格などの書き込みを見る限り、数年前、或いは十数年前まで営業していたのかも知れない…可倒式の椅子、洗髪用流し、ミラー、9時半を指したまま止まった掛け時計、散髪道具…保存の理由が意図的なものなのか?は定かでないが、いつ客が来てもいいように室内のすべてが昔とさほど変わらない状態で今もキープされているようだ。
待合室に飾られた絵は浮世絵のようである。店主の趣味なのか?それとも客が持ち込んだものなのか?はわからないが、昭和四十年代~平成二十年代という開業時期を思うと、妙に頷くものを感じる。
今頃、ご夫婦はどうしているのだろうか?今日もそんな思いに駆られて帰路に着いた。途中で満開となった庭の桜を見た。禅語(臨済宗、黄檗宗)に「年々歳々花相い似たり、歳々年々人同じからず」との言葉があるが、その摂理を強く感じた。
後継ぎが家業を継ぐ時代はとうに過ぎ去り、今は一代限りのケースが多い。それでも、そんな言葉で片づけるのがあまりにも切ない、本日の散歩であった。
横町コメント
年齢が三十近くも違うということは親と似た年恰好と言えます。但し赤の他人と親が違うのは距離を置かねばないということです。もしこのご夫婦が健在ならば、古き良き時代のことを是非話してみたいと考えています。この願いは、まずかなうことではないと思いますが、もしかして奇跡が起きないか?と思い、自ずと足がこの場所に向かうのです。もしどうしてもご夫婦への対面がかなわないのならば、せめてこの店構えがこのままずっと保存されるのを望みます。
今の自分に唯一できるのは、ご夫婦が今もどこかで存命であることを祈ることです。本日も最後までご覧頂き、ありがとうございました。
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