fc2ブログ
街道をゆく「芸備の道」
本日は「勤労感謝日」だが、私にとっては「文化の日」の第二弾のような印象がある。立冬をとうに過ぎだいぶ寒くなってきたが、文芸に励む気持ちは「芸術の秋」と少しも変わっていないのである。私は10時半ころ、若林図書館を訪れた。入り口を前に、私は今日も文芸にどっぷりと浸かってやろうという思いを深めた。



図書館で三冊の本を借りた後で2階の視聴覚室に行ってビデオを見た。司馬遼太郎原作の「街道をゆく」のVHS版である。このビデオは昨年の今頃から見始めたが、初夏頃から就職活動が忙しくなり、しばらく中断していた経緯がある。順を追ってすべての作品を見て、都度拙ブログで感想を発表したいと思っている。



本日鑑賞した「街道をゆく」は「芸備の道」である。



芸備とは広島県西部の安芸と東部の備後を総称した言葉で現広島県を包括した地域である。



街道をゆく「芸備の道」荒筋
前書き
司馬遼太郎が広島県の山間部を訪れたのは昭和54年のことであった。司馬は三泊四日の予定で小さな町を二箇所訪ねることにした。一つは安芸の吉田と、北方25キロ先にある備後の三次(みよし)という二つの盆地である。安芸の吉田は室町時代初期に毛利勢力が起こった土地である。三好盆地には朝鮮半島から渡ってきたタタラ衆(製鉄集団)が移り住んだとされるスポットである。



吉田町
吉田町の東部に郡山という高さ400メートルの山があり、全体を毛利元就は要塞として仕立て、農民とともに篭城し、攻め入ってきた隣国の尼子氏三万と戦った。司馬によると農民を城に招き入れて戦ったことに、領民を大切にする元就の思想がよく現れていると述べている。またその背景として、浄土真宗の開祖である親鸞の思想(阿弥陀如来による救い)の領民への浸透があると言う。

阿弥陀如来は多分に哲学的で宗教性を抑え、例え無神論者であっても、生かされているという感謝の気持ち(衝動)さえ起こせば、それだけで救われ浄土に行けるというのである。その証拠として今でも集落には門戸同士(敢えて信者同士とは言わない)の講があり、硬い結束で結ばれていると言う。元就はその真宗(浄土真宗)の民の心の拠り所となる本願寺の権威を損なうことなく、領民の立場になった政治を行い、徳を以て覇者となって行ったと司馬は言う。また、郡山の山中にある元就の墓所は当初は土饅頭のような古朴なものであったが、毛利への領民の敬愛の気持ちがその後の墓石の寄進(江戸期以降)に繋がったようだ。

三次町
吉田町を出た司馬が次に向かったのは三つの川が巴になって交錯する三次という町である。水稲をもって社会を造った日本人は古来から近世にかけて、川沿いや河口の地を好んで住み、司馬はその様を「水辺の民」と言う。そうした価値観から見れば、水田が出来る土地は一等地であり、畑地は三等地であり、川沿いに形成された三次の町こそ、日本文化の正統な佇まいと言えると述べている。司馬はこの三次の語源を古代朝鮮語で言うところの「好」を「村」と解釈し、三次の命名の由来を「水の村」ではないかと推測している。


更に、司馬は3世紀~5、6世紀に掛けて、朝鮮半島から海を渡ってきたタタラ衆(砂鉄から鉄を取った製鉄集団)の一部が出雲から流れてきて、この地に住み着いたという仮説を立てている。此の地は広島県内で発見された古墳の三分の二にあたる約2000基が発見された土地でもあるが、製鉄という武器によって権力を握ったタタラ衆がやがて豪族となり、こうした古墳に葬られたと考えても不自然でない気がする。放送の最後に私財を投じて円墳が取り壊されるのを防いだ河野寿氏の話が紹介される。こうした民間人の努力を司馬は高く評価し、その偉業を讃えたところで、この放送は締めくくられるのである。



感想、及び挨拶
司馬遼太郎の「街道をゆく」シリーズは全部で43作ありますが、今回の鑑賞で17作までを見終わったことになります。残念ながらブロ友様の中で広島県にお住まいのかたは居られませんが、関西にお住まいのかたが数名居られます。そうしたかたがたに身近に感じてもらえば幸いと受け止めております。また遠方にお住まいのかたには芸備という土地柄に少しでも興味を抱いて頂ければ幸いです。

こうした感想をまとめる作業は根気が要り、非常に地道な作業ですが、自分の歴史への知識を高め、筆力に厚さを加えるために意味のあるものと認識しております。私は三次という町の古墳の多さに着目し、そこに眠っている豪族の成り立ちに対して、司馬遼太郎がタタラ衆と結びつけて、朝鮮からの移民の起源を推測したことに鋭い洞察力を感じました。こうしたことを推察するには基礎知識が豊富でなければ出来ないことで、改めて彼の広い視野と勤勉さに触れた気が致します。本日も最後までご覧頂きありがとうございました。

関連記事

トラックバック

トラックバック URL
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)