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昨日の6月2日、東北学院大学で開催された震災と文学を受講した。テーマは「東北独立文学論」である。講座にお誘い頂いたのは文芸誌みちのく春秋編集者を務める井上康氏である。講師は学習院大学教授、福島県博物館館長、遠野文化研究センター所長を務める赤坂憲雄氏である。


会場となった東北学院大学ホーイ記念館は昨年の3月に落成したばかりである。ちなみに「ホーイ」の意味は東北学院創立時の三校祖の一人のホーイ氏とのことである。



私は井上氏とともに開講時間18時十分前に地下一階の教室に入った。今回の受講者の特徴は歴史関係の講座とは異なり年齢層が広いことである。受講者数はざっと50名前後であった。



講座の冒頭で赤坂氏から一部企業の内部で、「東北は日本の植民地」という隱語があると聞いた。これは明らかに差別用語ゆえ、東北人の私としては内心穏やかざるものを感じたが、気を取り直して先ずは彼の述べたいことを聞いてみることにした。一度固定概念を持ってしまうと、頭に血が上り講座の内容さえ耳に入らなくなるからだ。彼によるとこ本日のテーマである「東北独立文学論」を決めたのは仙台に本社を置く出版社・荒蝦夷の代表者の土方氏とのことである。



赤坂氏は大の東北贔屓であった司馬遼太郎の言葉を引用し、東北は稲作という安定したものがあり、これが中央集権国家への野心、反感をかき消してきたという。近代から近世に於いては戊辰戦争に敗れて賊軍呼ばわりさた東北はただ耐え忍ぶしかなかった。そんな東北が革命を起こし、政府に反旗を翻したものがフィクション小説に在るという。『吉里吉里人』と『蒼茫の大地、滅ぶ』である。



吉里吉里人』(きりきりじん)井上ひさしの長編小説。日本からの独立を宣言した東北の寒村、吉里吉里村の騒動を描いた作品。昭和48年(1973)連載開始。昭和56年(1981)刊行、同年、日本SF大賞と読売文学賞を受賞。東北地方の一寒村が日本政府に愛想を尽かし、突如「吉里吉里国」を名乗り独立を宣言する。当然日本政府は反発、これを阻止すべく策を講じるが吉里吉里側は食料やエネルギーの自給自足で足元を固め、高度な医学(当時日本で認められていなかった脳死による臓器移植を含む)や独自の金本位制、タックス・ヘイヴンといった切り札を世界各国にアピールすることで存続をはかる。



『蒼茫の大地、滅ぶ』(そうぼうのだいち、ほろぶ)西村寿行著の長編小説講談社の雑誌『小説現代』1977年9月号から1978年7月号まで連載され、1978年9月に単行本として刊行された。中国大陸で大量発生した飛蝗(ひこう:トノサマバッタの大群の飛来)が日本海を渡り、東北地方に襲いかかって農作物を食い尽くす。直接被害を受けた東北地方のみならず、日本全体に飢餓の危険が迫る。この未曾有の自然災害にあっても日本政府は、人々が飢え故郷を捨てるに至った東北地方を最優先に救済することはない。ついに東北6県は「奥州国」として日本国からの独立を図る。本作は架空の蝗害を題材にしつつ、発刊当時の日本の地方自治政策が抱える問題点をあぶり出し、中央集権の施策を批判する内容となっている。

横町感想
赤坂氏から紹介頂いた二つの小説は興味深いものを感じましたが、反面どうもしっくり来ないものも感じました。聞くところによると赤坂氏は東京都生まれ。然らば、東北生まれでもない人物が我が東北を面白おかしく取り上げるにも限度があります。先の復興相の某氏は先の大震災のことを「まだ東北でよかった」などと述べ、責任をとって大臣の座を去りました。東京電力や関西電力、中部電力の中にそういった隱語があるにしても、仮に社会的な立場のある人から「東北には植民地という隱語がある」などと言って欲しくはありませんでした。他の言葉(例えば「東北は古くから冷遇されてきた」など)であっても、十分にこの講演は成り立ったはずです。

東北人の中にはそんな気持ちなど微塵もないかたが大勢います。そういう私もそのうちの一人です。世に自分の出身地、出生地を植民地などと言われて気分のいい人はまず居ないことでしょう。どうしても述べるならオブラートに包んで欲しかった。過去において私はこれだけ後味の悪い講演会に出席したことはございませんでした。私は今回の講座の企画者である荒蝦夷と講演者に文書で抗議したい所存です。赤坂氏に問います。「あなたは東北人のことをどう思っておられるのでしょうか?植民地と言って思い浮かぶのは奴隷ですが、あなたは東北人のことをそう思っているのでしょうか?」

文化に携わる者は、多くの人の様々な考え方に触れ、人間の多様性を実感し、広角的視点を持つよう努めねばなりません。講座にお誘い頂いたみちのく春秋編集者の井上氏にはこの場を借りて御礼申し上げたい所存です。本日も最後までご覧頂きありがとうございました。最後にもう一度申し上げます。東北は植民地ではありません。敬愛して止まない父祖の地(ウェールズアンセム「我が父祖の地」より引用)です。



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