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第一話
いよいよ亘理滞在も僅かとなった。本日は天候も優れず一日中曇天で、時折小雨の降る空模様である。そんな天候もあって、きょうは散髪をしてから引越しの荷造りを進める予定を立てた。それはいきつけの理容店に向かう途中の交差点での出来事であった。ちょうど私が横断歩道渡ろうとしたとき、目の前を徐行気味のスピードで一台のワンボックスカーが横切った。

私は反射的に「ここは横断歩道だぞ!」と叫び車の後ろを通過すると後部座席の窓が開いた。ここで私は再び「ここは横断歩道だから一時停止だぞ!」と語ると、男は「過ぎてしまってからそう言ってもどうしようもないんだ!」と言って啖呵を切った。私が「俺はこれから気をつけろと言ってるんだ!」と返した。男は斜め後方の私に「過ぎてしまったことに文句を言うな!」と捨て台詞を吐いた。

これ以上関わると喧嘩になると直感し、私は男に一瞥をくれ、横断歩道をゆっくりと立ち去った。私は理容店につくと同時に、何か虚しい気持ちに襲われた。それは間もなく立ち去ろうとする亘理で、『立つ鳥跡を濁さず』という言葉に逆行するような嫌な思い出を作ってしまったという気持ちからだった。

理容店では店員さんになるべく平静を装ったが、すさんだ心を容赦なく吹き抜ける隙間風を止めるには至らなかった。店内では店員さんとは亘理や相馬で訪問した史跡や息子とのワンダーフォーゲル、定年後の抱負などの思い出話をしたが、横断歩道での出来事があったせいで、いまひとつ乗り気になれなかった。
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第二話
その後、スーパーと百均で買い物を済ませた私が帰途に着こうとすると小路で年の頃が私より10歳くらい上の男性からこう話しかけられた。「旧警察署のあたりに行くにはどこを行けばいいのですか?」聞けば彼は栃木の宇都宮に住んでいて土地勘がまったくないという。また通行人もまばらなので道を聞ける状態になかったらしい。

事情を聞いた私は彼と向かう方向が一緒であることもあり、近くまで道案内をすることにした。「ご丁寧に済みません。それにしてもこのへんは人っ気が少ないですね」私は自分が相馬勤務の身であることと、亘理町のローカルな土地柄のことを説明した。

これに対して彼は、10年ほど前に会社を定年退職し、5年ほどの嘱託雇用を経て今は年金暮らしだという。きょうは亘理に住む知人を訪ねて、東北新幹線を使って遠路訪ねて来たらしい。
「私は仙台から単身赴任で来ているのですが、亘理町はローカルな場所で人情が厚いのです。道を歩っているとよく知らない人から挨拶をされる土地柄なのです」
「そうですか。それはなかなかいいところに赴任されましたね」
………
アパートを過ぎた後も彼が道に迷わないように、目的地が近くまで彼を送った。別れ際に丁重に「ありがとうございました」と挨拶された。「いえいえ、郷に入れば郷に従うを行ったまでですから。」
私はさっきまで重かった自分の気持ちが少しだけ軽くなった気がした。一日一善という言葉があるが、嫌な思いをした後で行った罪滅ぼしとも取れる対照的なきょうの二つの出来事だった。

さっきまで降り続いていた小雨もようやく上がって、傘も要らないようだ。『さあ、昼食の後は荷造りだ』私は足取り軽く自分のアパートに帰った。

本日もご覧頂きありがとうございました。

PS:皆さん、喧嘩はいけませんね;

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